反脆弱な経済システム

日本経済新聞1月7日朝刊の「経済教室」でスタンフォード大学教授の星 岳雄氏が興味深い指摘をしている。それは「日本経済の停滞期に中高年の雇用はある程度守られたものの、若者(男性)の雇用が失われた」という点である。一方若い女性の就業率はアップしている。星氏が指摘するのは現存企業の存続や雇用の安定を図ることが優先されたことが、将来の人材育成、産業育成という面で大きな禍根を残したということである。つまり現存企業、中高年の雇用という救済策(星氏によれば下位システムの脆弱度を下げる試み)が全体システムの脆弱度を高めるという皮肉な結果を招来している。

大事なことはゾンビ企業を保護する政策ではなく企業の世代交代を進めることであり、そのためには「新旧世代を網羅した論議の活性化」の必要だと星氏は言う。

この論文を読んで私なりに思うことがある。

1.ゾンビ企業を保護しない政策は既に北欧諸国で実行されている。新しい職につくための職業訓練制度も整備されている。日本も北欧から学ぶことができるのではないか。

私自身以前建設業界に身を置いていたが、上場されていた建設会社は会社更生法を申請してゾンビ化した。

2.なぜ若者の男性の雇用が進まなかったのか、その理由をもっと解明すべきではないか。

企業が即戦力を優先し、人材育成を後回しにしたということだろうか。そして即戦力が本当に企業にそれ相当の利益をもたらしたのか。

3.私達が会社に入った頃は終身雇用制で、転職は簡単ではなかった。現在は雇用形態の複線化しているため、働き方を選ぼうと思えば選べる。かつては就社だったが現在は就職だ。愛情を注いで育てた部下がある日転職するということは大いに有りうる。大企業の場合はそのような問題は比較的少ないかもしれないが、中小企業の場合は転職リスクは大きい。これは中小企業の社長にとっても大きな悩みの種ではないか。それなら転職リスクの少ない中高年を、という気持ちも分からないではない。