「共感力」のビジネスモデル
NHKのクローズアップ現代でこのテーマを取り上げていた。共感力がマーケティング(丸大ハムのハム係長、富士フイルムの化粧品、パナソニックの幸せ家電)、組織改革(食品スーパーカスミ)、対立関係を超えた合意形成(静岡県牧の原市)の事例が紹介されていた。マーケティング、組織改革ではソーシャルテクノロジー、フェースブックが活用されている。エンゲージメント率という「共感」を示す数字もある。現在は企業も、商品も共感を消費者に持ってもらわなければ売れない時代なのだ。従来の企業側の一方的な宣伝・広告では消費者の心をつかむことはできない。共感とは簡単に言えば「実は私もあなたとおなじですよ」ということだ。同じ部分を見つけ出し、そこに人を集めることで、共感を持つ集団を作り出すことができる。悪用すれば「心理操作」になることも有り得る。ビジネスの世界で共感を形成するとは、顧客視点に立つことであり、また顧客を理解することでもある。いずれも「想像力」を必要とする。この想像力はどこからくるだろうか。実際に自分が顧客になれば、想像力は動き出す。立場を変える、というのが一つの方法だろう。しかしこれでは主観性のバイアスが強く出る可能性がある。やはりできるだけ多くの顧客の本音、リアルな声に接することが大事なことだろう。傾聴だ。しかし、顧客を理解するためにはそれだけでは不十分で、大切なことは「深く理解する」ことではないか。顧客が「私のことをそこまで分かってくれてうれしい」さらには「「私以上に私のことを考えてくれる」と思ってもらうことができたら、共感も確かなものになっていくだろう。そのためには企業側にも消費者側にも本当の意味での対話能力が求められる。対話はお互いの違いを尊重しながら、違いを持つ自由を大切にしながらも、共通の領域を見出し、その価値を一緒にめていく行為だ。付け焼刃、表面的な打算が通用しない世界、と言っても良い。
ソーシアルテクノロジーは消費者に、企業と対話する場と手段を与えた。ビジネスの世界では数字化が鍵を握る。その意味で富士フィルムの「エンゲージメント率」は参考になる。
「ビジネスモデルジェネレーション」ではXPLANE社が開発した「共感マップ」が紹介されている。顧客の感動段階、対話レベルなどもいずれ数字化されるのだろうか。感情と理性がバランスよくミックスされた状態、それが日本人の「共感の質」ではないかと思う。目的毎いその混合比率を変えていく工夫が求められるのではないか。