アベノミクスの息切れ 厚生経済へ舵を切る時期

 

内閣府が14日発表した7~9月期のGDPは前期4~7月の年率3.8%増に比べて半減の1.9%に留まった。今迄景気の正に「気」を変えるために金融緩和と公共事業の増加で株価上昇を「演出」してきたが、成長の勢いに陰りが見えてきた。というよりも本当の課題が見えてきた。GDPの6割を占めるのが個人消費と輸出だ。いずれも低迷している。経済が本当に立ち直っていくためにはやはり個人消費の伸びがカギを握る。景気は良くなってきたようなムードだが、消費者としては確かな実感とはなっていないというのが正直なところだろう。言い換えるならば、安心してお金を使える状況ではない、ということだ。雇用、賃上げ、格差是正、年金・医療制度の改革などまだまだ不透明な状況にある。特に雇用が問題だ。日本の大企業にはリストラ中心の利益確保から、イノベーションをベースにした戦略的な事業拡大に事業構造を転換し、特に若年層の雇用に努めてほしい。また中小・零細企業も自立的な事業構造を構築して、中小企業ならではのイノベーションに取り組んでほしい。日本企業独自の強み、差別化要素を見詰めなおし、磨く中でイノベーションのシーズは見つかるのではないかと思う。企業として収益力が高まれば、結果として賃上げも可能になるだろう。成長経済から成熟経済へのパラダイム転換が進む中、イノベーションのあり方も変ってきている。技術中心ではなく生活中心のイノベーション、そしてそれを収益に転換するビジネスモデル。特に中小企業のイノベーションを促進する環境づくり、税制面での支援体制も欠かせない。政府は成熟社会での将来不安を解消する日本のこれからのビジョンを明確にしなければならないと思う。経済学の面では成長経済論よりも厚生経済論が重要になってくるだろう。これからの課題は利益の創出だけではなく、利益の公正な分配になる。そのための総合政策が立てられなければならない。新自由主義では社会が荒廃してしまいかねない。