アマン伝説と一人カラオケ専門店
「アマン伝説」が文芸春秋から最近出版された。日本経済新聞5月19日朝刊の書評を読み、これこそ大から小へのビジネスモデル転換とピンと来た。書評によると「1980年代、高級ホテルは大規模化し均質化に向かった。しかし、本書の主人公エイドリアン・ゼッカはその逆を目指した。あえて規模を「縮小」し、もてなしの質を大きく膨らませていく。タイ・プーケット島の辺鄙な土地に、現地の伝統的建築様式を採用したヴィラスタイルの客室をつくりあげた」。アジアンリゾートの登場だ。私は1981年、初めてマレーシアに出張し、クアラルンプールから車でクアンタンハイウエイを使ってクアンタンに行き、そこでハイアットクアンタンに泊まった。まさにアジアンリゾートの雰囲気溢れるホテルだった。南シナ海を眺めながらデッキで食事をした。大袈裟に言えば夢のような世界だった。さて今日銀座に出てついでに教文館に寄り、「アマン伝説」山口由美を購入した。私は本を購入するとまず全体をパラッと見て、まえがき(プロローグ)、あとがき(エピローグ)を読むようにしている。エピローグの中のエイドリアンの指摘は興味深い。彼は人々の興味は細分化している。アマンリゾーツはライフスタイルの創造であると強調する。著者の山口氏はこう述べている。
「現代人のライフスタイルは多岐にわたる。それは、とてもひとつの大きな「箱」で提供しうるものではない。ライフスタイルごとに小さな「箱」をいくつも用意する。1983年という段階で、このことに気付き、アマンリゾーツのコンセプトを発想していたとしたら先見の明ということになる」。小さなヴィラということであれば、なかなか予約も取れず、羨望感を高める結果になったかもしれない。話は変るが、最近「一人カラオケ専門店」が増えているとのことだ。全国展開を図っている腰高 博氏によると「グループでは好きな曲を歌えないのではないか」と考え、1畳ほどのスペースで一人ヘッドホンをして思う存分歌に没頭できるシステムを開発した。どちらもキーワードは細分化とおもてなしだ。大から小へのビジネスモデル転換のグッドモデルだ。細分化すれば、おもてなし、サービスも充実していく。現在は多様性、「個客」の時代なのだ。