トマ・ピケティの「21世紀の資本論」
ピケティの掲題の本が注目されている。東洋経済7/26号がピケティとの独占インタビューを掲載している。この本はグローバル化により、中間層が貧困化すると警告している。
経済成長率より資本収益率が高くなり、資本を持つものは更に蓄積を進めていく傾向にあり、資本を持たない中間層は貧困化し、社会の不平等が進行する、としている。対策としては資産に対する累進課税をピケティは挙げている。
この本の核心は「r > g」という数式で表される。資本収益率(r)が経済成長率(g)をつねに上回るという意味だ。株や不動産、債券などの投資によって獲得される利益の成長率は、労働によって得られる賃金上昇率を上回るということだ。
社会の安定を実質的に担っている中間層が解体されると著名なエコノミストは指摘する。
一例として、コンピュータサイエンスを学んだエリート技術者が現在生活保護を受けている事例が紹介されている。成果主義の人事評価をキッカケにアルコール依存症になり、結局退職する羽目となり、あとは会社を転々として、現在は生活保護を受けつつ働く機会を探しているとのこと。「今感じているのは、この社会はレールから外れた人間にとことん厳しいということ」
どうもピケティは日本が極端な格差社会に移行すると見ているようで、気になるところだ。
「みんな仲良く貧困社会」になるのだろうか。アメリカでは10%の富裕層が残りの90%と同じ所得を得ているとのこと。日本でも10%の富裕層に入るためになりふり構わず資本獲得に走る人々が出てくるだろう。殺伐とした社会になるかもしれない。