呼びかける者、問いかける者に対して

NHKの「心の時代」でフランクルを取り上げていた。哲学者で、フランクルの著作を翻訳している山田 邦夫氏がインタビューアーに答えている。私は人生の節目節目でフランクルの著作を繰り返し読んできた。「夜と霧」そして「それでも人生にイエスという」。忙しい日々を送っているといつの間にか忘れてしまうのだが、フランクルの言葉、そして山田氏の考察は、つかのま、私を深い所に立たせてくれた。それは私が誰かに、あるいは大いなる者に呼びかけられている存在、問いかけられている存在であることを教えてくれる。

私も他の人と同じように中年期の危機に直面した。辛い、また悲しいことが次ぎから次へとやってきた。自分の人生に失望していた。「これからどんな良いことがあるのだろうか、ありはしない」。今になって分ることだが、自我を超越しなければならない時だった。その先に本来の自分があるということを知らなければならない時だったのだが、「なぜ私はこのように苦しまなければならないのか」の意味が分らず煩悶した。フランクルの「人生が私に問いかけている」という言葉はまさに天啓のようだった。人はいつも問われている存在なのだ、ということを知った。それは私にとって救いでもあった。

今回の対談で山田氏はフランクルの大著「人間の回復」を紐解きながらユダヤ教の神という存在よりもっと深いところにある「自然」(ジネン)という概念にフランクルが到達していると指摘していた。