実物教育の重要性・ブドウ栽培と万葉集理解
私の集っている教会の駐車場の片隅にブドウの木を植えた。毎週礼拝の後、短い時間だが仲間と一緒に作業をし、また新約聖書ヨハネの福音書の15章の最初の部分を読んでいる。ブドウの木を見ながら、実際にブドウの世話をしながらこの個所をもう一度読んでみると新しい発見がある。ただ字面だけを追うのではなく、実物を目の前にして読んでみると更に深く理解できることがある。
奈良大学の上野誠教授は万葉集の研究家で、独得の教授法をとっている。例えば持統天皇が歌った、春すぎて 夏来(き)にけらし 白妙(しろたへ)の 衣(ころも) ほすてふ 天(あま)の香具山(かぐやま)。この歌が読まれたと思われる場所に上野教授は学生達を連れていき、この歌が何を歌おうとしたのか、学生達に考えさせる。山の形、高さは万葉の時代も現在も変っていない。文学作品にも現場感覚を持ち込むことが大事だ。文字を見ていただけでは分からないこと、見えていないことがあるからだ。とりわけ作者の本当の心が。