戦後70年・日本の農業とドイツの農業比較

同じ敗戦国でありながら、現在ドイツはGDPで日本より2割多く、しかも財政収支は黒字である。25年前東ドイツと統一してからその復興に300兆円を費やしながら、健全財政を実現している。何という底力だろうか。

さてそれでは農業はどうだろうか。このことを考えるためにドイツ農業を取り上げた書籍を神保町の農文協書店で探してみたが、関連図書は4~5冊しかなくまた最近書かれた本は1冊しかなかった。それは筑摩書房ブックレットの「ドイツ農業と『エネルギー転換』」だった。著者は村田武氏。2013年10月7日に発行されている。

ドイツは1950年代後半には小作法と土地整備法で農地所有の近代化を図り、借地型自立経営を創設して農業構造を改革。1962年に連邦政府は欧州共同体(EC)を通して「共通農業政策」によってアメリカ産穀物による国際穀物価格との競争を遮断した。つまりドイツは欧州共同体と一体となって農業政策に取り組んできた。域内農家は手厚く保護され、生産意欲をかきたてられた。

一方日本は1970年代の減反政策と補助金、1999年の新農業法による競争原理の導入により、農家の意欲を削いできたと言われる。

しかし欧州共同体(EC)では過剰生産を契機として、1968年にそれへの対応として「マンスホルト・プラン」が発表され、EC共通農業構造改革が実施され、ドイツでは「効率的に管理された企業」基準の大規模穀作経営を地域農業の主幹経営として小農民の離農を促した。ただこの大規模穀作経営は平坦地で可能になるものであり、農業条件に恵まれない地域では別の道が必要だった。そのような中で打ち出されたのがバイエルン州による「バイエルンの道」だった。

この道は「農家は農業による収入だけではなく、農外収入を合理的に確保することによって、総体としての所得の増加を図ることができる」というもので、ここから「マシーネンリンク」という新しい仕組みが構築された。この仕組みは非常に興味深いものだ。個々暫くは村田氏の本も参考にしながら、ドイツの農業政策から何かを学びたいと思う。最後に日本とドイツの食糧自給率(供給熱量自給率)を比較しておきたい。

日本     ドイツ

1970     60      68

1997     41      97