梅の花に寄せて

「梅花耐風雪 到時放雅香」という詩句がある。梅の木は風雪に耐えて立っているが、時到れば花咲き、雅香を放つという意味である。梅の花が香ばしい匂いを放つには、風雪に耐える月日が必要になる。と同様に、春先に比較的暖かい日が続いていても、本格的な春になるにはまだ寒い日を経験しなければならないということである。

今日のテレビで世田谷区の羽根木公園の梅の様子を放送していた。私の実家は羽根木公園の近くにあり、車椅子生活になった父を連れて母と一緒に羽根木公園に行ったことがある。梅が満開の時期だった。梅の正に雅香としか言いようのない匂いを楽しみながら、白梅、紅梅の林の中を車椅子で散策した。母は時々立ち止まり梅の花を見上げていた。その姿を私は今でも忘れない。父はこの散策をとても喜んでくれた。

まだ寒いせいもあるのだろう、梅の花を見にやってくる人が次から次へとやってくるが、桜の花見ほどの混雑ではない。ゆっくりと観梅できる。

昔はお花見と言えば梅だったそうだ。いつから桜になったのか。風雪に耐えて花を咲かせ、咲かせた後も寒さの中で雅香を放つ梅。梅の花を見ると父と母を想い出す。できるだけ時間をつくって羽根木公園、そして上野公園に観梅に訪れてみよう。