現在の中国モデルと下からの社会大革命
私がまだ学生の頃、独占資本と国家権力が結合した体制としてマルクス経済学の立場から「国家独占資本主義」(略称国独資)という見解が出された。以前国家独占資本主義について書かれた本が本棚にあったが処分して、今はもうない。なぜこの言葉を思い出したかというと中国の現在の経済体制も形を変えた「国家独占資本主義」ではないかと考えたからである。形を変えたというのは、国家が独占資本を産み出し、国家が独占資本を支配しているからだ。その独占資本の担い手は中国共産党幹部であり、強力な既得権益層を形成している。独占資本は腐敗を生み、利益の偏在をもたらす。健全な経済発展のためには、自由で創造的な経済・社会環境が必要不可欠だが、これはすなわち現在の「国家独占資本主義」の自己否定につながる。あまりにもうまい汁を吸ったため、いや吸っているため、もし独占資本を否定するようなことになれば、独占資本側からの死に物狂いの抵抗に会うのは目に見えている。中国共産党は自己否定につながるようなことは国家の混乱と崩壊を招くという理由で、しないであろうし、またできないと考えられる。現在の「国家独占資本主義」の後の中国にとって相応しい国家体制、経済体制の将来図は描けているのだろうか。かつて毛沢東はアメリカ合衆国を中国の将来モデルとして検討させたと聞いたことがある。現政権はあくまで現在の延長線上で、改革を続けていこうとしている。東南アジア諸国の安定した経済成長を支えているのは中間層の拡大だと言われるが、中国の場合は格差が極端に拡大し、富裕層と貧困層に二極化している。中国の経済的、政治的矛盾は臨界点に近づいていると思われる。かつて毛沢東は、人民解放軍は「人民に奉仕する」と雷峰をモデルにして全国民に訴えた。中国の国家指導部が混乱した時、人民解放軍がどのような行動をとるかも大きな問題だ。八大軍区間での指導権争いも起こるかもしれない。ここ1~2年の間に、中国で大変動があるかもしれない。それは恐らく下からの「社会大革命」という形をとるのではないか。毛沢東の肖像画をかかげた「人民に奉仕する」大衆運動という様相を呈するかもしれない。