選択ではなく凝縮

デザイン思考については「ビジネスモデルジェネレーション」でもティム・ブラウンの「CHANGE BY DESIGN」でもその特徴が説明されている。さて今日デザイン思考の重要性はますます高くなってきている。特にビジネスに携わる経営者、ビジネスパースンにとって、デザイン思考は欠かせない思考方法となっている。それはなぜだろうか。私はその理由として3つ挙げたい。

1.デザインとは「デ(de)」と「サイン(sign)」の組み合わせの言葉だ。定義から判断すればdeにはawayとかoffの意味があり、意味(記号)を構成している組み合わせから離れたり、変えることと受け取れば、デザインは従来の考え、常識から離れたり、否定したりすることだということになる。このように広く定義すればデザインはものの形だけではなく。私達の知的活動にも活用することが可能だ。

2.今日のデザインは、ヒューマンファクター、つまり人々が本当に求めているものに向って、意味の組み替えを行なっていく、ということで威力を発揮する。ここで大事なことは人々、つまり今生きて生活し、活動している人間の現在と未来に向って古い構成要素を引算し、新しい構成要素を足し算していく作業だ。構成要素は技術よりも人間のdesireに焦点を合わせたものが求められる。desireは次のdesireを産みだす。

3.デザイン思考は演繹的ではなく帰納的だ。現場で個々の具体的現実の中から人間への共感、インサイト、対話という一連のプロセスを「見える化」していく。共感について「ビジネスモデルジェネレーション」の共感マップを見た時、いやその前にビジネスモデルキャンバスを見た時の感動を思い出す。

さてデザイン思考は「繰り返し型」、つまり選択して削除していくのではなく、「繰り返して凝縮」していくものとトム・ケリーは最近「フォーブス6月号」で答えている。私はトム・ケリーのこの考え方に触れて気付かされることがあった。選択より凝縮。どのように凝縮していくか、その思考法についてまず自分で考えなければならないことのようだ。