6月1日(月)物語としての歌、それは語り掛けるように
若い頃、シャンソンの世界に憧れた。シャンソンの曲の中で、イントロのところはまるで歌うというより話しているかのようなのがあった。話しているうちにいつの間にか歌っている。話しながら歌い、歌いながら話している。シャンソンにしてもポルトガルのファドにしても詞の中にストーリー、さらにはドラマ性がある、と私は思っている。その意味では詞の役割は重要だ。1番、2番、3番と物語が展開していく。一方日本の歌謡曲はどうだろうか。創造的思考である「等価変換理論」を提唱した同志社大学教授の市川亀久弥氏は歌謡曲にも一家言を持っていて、大変興味深い指摘をされている。氏は歌謡曲はその時代の人々にとって「カタルシス効果」を果たしてきたと言われる。嬉しいにつけ哀しいにつけ人々の心に寄り添う、というのが日本の歌謡曲の特質ということだろう。最近杉本まさとの歌を聞きながら、自分の人生の一部を歌に重ね合わせることがある。少し小難しく言えば、問いかけてくる歌だ。そこでは自分なりの応答が求められている。毎日のように
聞いているのは「鮨屋で」。いい歌だ・・・。