日本型ビジネスモデルの精神的基礎について

ビジネスモデルについての自分なりの研究を始めてからかれこれ5年以上になるだろうか。

最初ビジネスモデルについて具体的に知ったのはハーバーとビジネスレビューの論文でだった。その後、ビジネスモデル関係の書籍が新しく出版される都度購入し、読んできた。

ビジネスモデルはイノベーションとも関係しているので、その種の本を含めると20冊以上読んだことになる。ところがそのような本を読んでいるうちに、ビジネスモデルの精神的基盤は日本にもあったのではないかと思うようになった。それが私を江戸時代のビジネスモデルに向わせた。その結果、私は日本型ビジネスモデルをライフワークにしたいと決意を固めた。以前机の上にあったビジネスモデル関係の書籍は欧米人が書いたものが大半だったが、現在ではかなり様子が変ってきている。机の上にあるのは、

・「近江商人の理念」小倉栄一郎著 サンライズ出版

・「無私の日本人」 磯田 道史著 文芸春秋

・「代表的日本人」 内村 鑑三著 岩波文庫

・「経営学」    小倉 昌男著 日経BP社

・「日本型イノベーションのすすめ」小笠原 泰著 日本経済新聞出版社

などだ。「近江商人の理念」からは「三方良し」の理念がどのように生まれたかを学んでいる。「無私の日本人」の「穀田屋十三郎」からは逆転の発想と「共益」の思想を学んでいる。

「代表的日本人」からは天の理法と人間を超える大いなるものとつながる日本人固有の霊性について考えさせられている。また上杉鷹山と二宮尊徳の生きかたからは道徳と経済の密接な関係、農に対する厳粛な姿勢に胸を打たれる。「経営学」からは全員経営と企業の存在意義について教えられる。「日本型イノベーション」からは「モノではなくコト的志向性」をモノサシにして、イノベーションを個人ではなく組織/集団の観点から捉えることの重要性を教えられている。

キーワード的に整理すると、共存共栄、三方(者)良し、逆転の発想、「共益」の思想、自然(天)と道徳と経済の融合とそれを可能にする日本的霊性、新しいことに取り組む経営者の勇気と企業の社会的責任、そして無限に改良・改善を集団として追及する日本人の心性。これからの人生の日々を私なりの日本型ビジネスモデルの完成に捧げていきたいと思う。日本だけでなくいつか世界に、その前に東洋的思想、感性を持っている東南アジアの人々にも伝えていきたい。

 

日野原先生の言葉

日野原先生が監修した「生きかた上手手帳」を使っている。今週のことばを読んで大いに気持を鼓舞された。以下は日野原先生のことばだ。

「私は「創(はじ)める」という言葉が好きで、よく使います。年齢を重ねてもしなやかに、発想を転換できる自由さ、新しいことを独創する大胆さと強靭さをもち、行動していきたいものです」

日野原先生は今年2016年105歳を迎えられた。2020年の東京オリンピックを見届けるために自分の体を守る努力を欠かさずされているとのことだが、驚嘆するのは「新しいことを独創する大胆さと強靭さをもち、行動していきたい」という思いだ。

私自身年齢のことで自制的になったり、弱気になったりすることがあったが、「大胆、強靭、行動」の文字を見て考え直すことができた。

私の場合大胆とは新しく設立した一般社団法人ジャパンベジタブルコミュニティを発展させるためのアイデアを大胆に打ち出し、行動するということになる。また強靭とは試練、困難、問題に屈しない、崩れない精神だ。また続けていく持続力でもある。

これから一年間日野原先生の「今週のことば」を私の歩みを先導し、照らしてくれる灯火として読み続け、併せて心の糧としていきたい。

 

仕事について

以前このブログでも書いたことだが、「仕事」とは何かをもう一度考えてみたい。仕事という言葉を分解して解釈すると「仕えること」ということになる。それでは誰に仕えるのか。当然相手によって仕えることの内容が違ってくる。日本の封建時代には仕えるとは藩主に仕え、上役に仕える、家にあっては親に仕える、ということになり、藩主、上役には身命を賭して仕え、親には孝養を持って仕える。つまり自分より上位の者に仕えるという意味合いがあった。西欧では仕事・職業はCalling、天の神から与えられた天職という考え方が一般的だ。神の召しに応じてそれぞれ与えられた能力に応じて働き、最終的には神に仕えていく。こちらも上位者に対して使えるというニュアンスがある。

このような考え方と一線を画すのはイエス・キリストの教えだ。イエスは最後の晩餐の席で弟子達の足を洗われた。足を洗うというのは当時は奴隷達の仕事だった。イエスは言った。「主であり師であるこのわたしが、あなたがたの足を洗ったのですから、あなたがたも互いに足を洗うべきです」(ヨハネの福音書13章14節)

このような精神を経営トップに伝えるため、日本にもサーバントリーダーシップ協会がある。資生堂の12代目の社長池田守男氏はこの精神に基づき現場で働く人達が一番上に来て、社長が一番下にくる逆三角形の経営体制を取った。

仕事についての考え方は人によりさまざまだろう。私の場合、仕事観はサーバントリーダシップに近いところにあるが、最近では自分が思いを託された過去の人々、そしてまだ見ぬ未来の人々にも仕える、という考え方になってきている。それが、私が仕事をするモチベーションになってきているように最近感じている。できることは限られているだろうし、ささやかなものでしかないと思うが、できることをやれればいい。私の思いを、できたことを託すことのできる人が見つかれば更に嬉しいことだ。

 

山を元の森に戻す取組み

今日の午後、高尾にある霊園にお墓参りに行った。私の両親が眠っている墓だ。霊園についてみると向い側の山肌の木が全て伐採されている。最初は墓地の区画が足りなくなって区画の拡張のために山肌を露出させ、これから区画づくりのための工事をするのかと思った。墓参りを終えて、バスの乗り場迄戻ってきたが、発車時刻までまだ10分以上あったので、近くの休憩所に行ってお茶を飲むことにした。自動給茶器から紙コップにお茶を入れて飲んでいた時、壁に張ってあるポスターに目が留まった。そのポスターのタイトルは「高尾の山を元の森に戻す取組み」となっていて、現在は針葉樹(杉の木)がほとんどの山を、広葉樹主体の森に戻す方法が描かれていた。頂上と裾野は広葉樹、中腹は針葉樹という具合だ。現在は伐採した杉の販路開拓キャンペーンをやっているようだ。高尾の杉は品質がいいらしい。私のとんだ早とちりだった。休憩所に佛教情報誌の「Mudita」が置いてあったので1部頂戴して読んだ。「人間の分別をはずしてみよう」「お迎えは死ぬ準備ができたよと家族に優しく伝えるメッセージ」が掲載されていた。前の文章からは人間の分別には限界があり、もっと高いレベルで物事を眺める大切さを、後の文章からは仙台の医師岡部健氏の「お迎え」についての調査結果が紹介されていた。岡部さんは宗派を超えた「臨床宗教師」の活動の基礎を造った方だ。死に行く人々の心のケアーの重要性を岡部氏は訴えていた。この佛教情報誌をたまたま手に取ったお陰で久しぶりに岡部氏の働きについて思い出すことができた。死は恐れを持って考えられることが多い。それは死後の刑罰などがイメージされるからだろう。死と向き合い、死の意味、死の価値をきちんと理解する時代が来ているのかもしれない。

 

「東京の緑」復活活動

「江戸のみどり復活事業」という活動がある。パンフレットによれば「生物多様性を回復させる取組の一つとして、東京都と先駆的な在来種植栽を行なっている企業が連携し、実際の植栽地をフィールドとして活用しながら、在来種植栽の管理方法や効果的な普及啓発策等を多角的に検討する事業」とある。この復活事業に参画している企業として株式会社フジクラ、三井住友海上火災保険株式会社、森ビル株式会社が紹介されている。

今回「江戸のみどり復活事業」フォーラム2016が1月27日に開催されるので参加することにした。それにしても東京は江戸から東京に変る過程で都市化と工業化を急激に進めたが、特に第二次大戦後、焦土となってしまった国土を復興させるために極度の都市化と工業化、特に農業から製造業への人口移動、それに伴う住宅の供給、田畑の宅地化、自然環境特に緑地の開発・破壊が進んだ。そして現在、人口減少、高齢化の波の中で人工都市の空洞化が進んでいる。都心の区の中には1世帯当りの人数が2人を切っているところもある。一度宅地化した田畑、自然環境を元に戻すことは簡単なことではない。生態系が回復するまでに何年かかることだろうか。これからも東京への一極集中は続くと思われる。

まず今ある自然環境を極力破壊しないことを望みたい。最近は大型ビルを建てる時は一定の面積の緑化率が義務付けられているが、それこそまさに義務ということで在来種と関係の無い、メンテナンスに手間のかからないセダムとかキリン草が使われることが多い。形だけだ。本当の緑を回復して初めてみどりの復活といえるのではないか。現在のみどり率向上の義務緑化はメンテンスをしないため殺風景の荒地をつくるだけだ。後は野となれ、山となれ、ということだろうか。

日韓関係の難しさ

日韓関係は今後どのようになっていくだろうか。今回の慰安婦問題での合意は日韓関係の重要性から合意に到ったのではなく、韓国政府は米国を意識して、つまり米国の支持を取り付けるために行なわれたとの見方がある。韓国にとって不利で負担の大きい合意であるとの指摘があるが、韓国政府はそれほどまでして米国に意向に沿わなければならないというところに追い込まれていた。韓国は対中国との貿易取引が高いことを理由に中国に接近しすぎていた。いずれこの修正をしなければならなかったが、今回の慰安婦問題がそのための恰好のキッカケになったという面があるのではないか。譬えてみればお互い握手をしたが日韓首脳の顔はいずれも米国を向いていたということである。今後中国の経済成長が減速するのに伴い、韓国の対中依存度は相対的に下がると思われるが、依然貿易面では最重要国であることは変らないのではないか。従って韓国が中国と米国の間で微妙なバランスを取りながら立ち回る姿は変らないだろう。形の上では合意したが、日韓の間で今後どこまで本当の相互理解が進むか、国民の一人として注視していきたい。

 

限定販売の良さ

大量生産、大量販売で会社規模を大きくするというのが一般的傾向だが、商品によっては規模を追わずに限定販売に徹する、という行き方もあるのではないか。そんなことを思わされたのは香川県小豆島のオリーブ農家、農業生産法人 井上誠耕園の「緑果オリーブオイル」だ。井上さんは三代目園主ということだから、お祖父さんの代からのオリーブ農家なのだろう。さてその井上さんが同園のオリーブだけではすぐ完売してしまうので、スペインのオリーブ農家に協力を依頼し、「共同開発」することになったとのこと。ここで私などはどうして小豆島の他のオリーブ農家に協力を依頼しなかったのかな、と思ったりする。

井上さんの思いを理解するオリーブ農家がいなかったということだろうか。あるいは収穫時期が異なるので販売期間を拡大できるということだろうか。

いずれにしても生産量が少ないので「限定販売商品」だ。エゴマの栽培についてビジネスモデルをデザインしているところだが、参考になる事例だ。

 

反脆弱な経済システム

日本経済新聞1月7日朝刊の「経済教室」でスタンフォード大学教授の星 岳雄氏が興味深い指摘をしている。それは「日本経済の停滞期に中高年の雇用はある程度守られたものの、若者(男性)の雇用が失われた」という点である。一方若い女性の就業率はアップしている。星氏が指摘するのは現存企業の存続や雇用の安定を図ることが優先されたことが、将来の人材育成、産業育成という面で大きな禍根を残したということである。つまり現存企業、中高年の雇用という救済策(星氏によれば下位システムの脆弱度を下げる試み)が全体システムの脆弱度を高めるという皮肉な結果を招来している。

大事なことはゾンビ企業を保護する政策ではなく企業の世代交代を進めることであり、そのためには「新旧世代を網羅した論議の活性化」の必要だと星氏は言う。

この論文を読んで私なりに思うことがある。

1.ゾンビ企業を保護しない政策は既に北欧諸国で実行されている。新しい職につくための職業訓練制度も整備されている。日本も北欧から学ぶことができるのではないか。

私自身以前建設業界に身を置いていたが、上場されていた建設会社は会社更生法を申請してゾンビ化した。

2.なぜ若者の男性の雇用が進まなかったのか、その理由をもっと解明すべきではないか。

企業が即戦力を優先し、人材育成を後回しにしたということだろうか。そして即戦力が本当に企業にそれ相当の利益をもたらしたのか。

3.私達が会社に入った頃は終身雇用制で、転職は簡単ではなかった。現在は雇用形態の複線化しているため、働き方を選ぼうと思えば選べる。かつては就社だったが現在は就職だ。愛情を注いで育てた部下がある日転職するということは大いに有りうる。大企業の場合はそのような問題は比較的少ないかもしれないが、中小企業の場合は転職リスクは大きい。これは中小企業の社長にとっても大きな悩みの種ではないか。それなら転職リスクの少ない中高年を、という気持ちも分からないではない。

 

ITとリアルの相乗効果

これは私の素朴な疑問なのだが、ITはどのような場合自己完結的な世界をつくることができるのか。私のこれからのビジネスについての大雑把な分類は以下3つだ。

1.ITだけ、つまりバーチャルな世界でビジネスが自己完結する。これは例えばゲームなどの場合は可能だろう。

2.ITとリアルの融合、相乗効果を実現する。この場合ITはツール、手段となる。

3.リアルだけで勝負していく

さて「疑問」と言ったのは、Webでプラットホームを作り、運営しているある会社のスタッフSさんと話していた時、意見交換で違いを感じたためだった。

Sさんは現在直面している問題をWebの世界で解決したいと思っている。しかし具体的にこれ、と言ったアイデアがあるわけではない。理由を聞いてみると、Webの世界ならそれほどコストがかからない。仕組みで勝負できると考えている。このWebが目的としていることを実現するためには、リアルを加え、相乗効果を出す必要がある、というのが私の意見だった。ただリアルの場合、時間とコストがかるので、一つに絞って相乗効果を出すことを提案した。Sさんの会社はIT系の会社なので、ITでの解決にこだわるにはよく分る。

近いうちにまた意見交換できることを楽しみにしている。なぜならWebの世界に詳しくない私に相談があるということはどこかで、リアルを加えて問題を解決したいという気持ちがSさんにあるのではないかと思うからだ。リアルな部分なら私も協力できる。

 

有機野菜でこども食堂

テレビのニュースで「こども食堂」についての研究大会が開催されている様子を見た。日本全国で「こども食堂」が増えている。私たちが住んでいる埼玉県でも「こども食堂」が増えつつある。私も「こども食堂」に以前から関心を寄せている。

「こども食堂」に集まる子供たちは貧しい家庭で子供に十分な食事を与えられないとのことだ。まず食事をしっかり取れるようにすることが第一だが、私はさらに美味しい野菜を子供たちに食べて欲しいと思っている。私は畑で有機栽培で、野菜を育てている。家族だけでは食べきれないので、お裾わけをしているが、それを子供たちにも食べてほしいと思う。準備が整ったら、将来「こども食堂」を始めたい。そしていつか食べるだけではなく、野菜づくりを手伝ってくれる子供も出てくることだろう。私達の夢だ。