「場の農学」

 

今朝の日本経済新聞の書評欄に、祖田 修氏の「近代農業思想史」の書評が掲載されている。興味深い内容だ。購入して読むつもりだが、あらかじめ自分の問題意識を整理しておきたい。私の場合、読書は真っ白な気持で読む場合と、あらかじめ自分の関心あるいは自分の問題意識を整理しておいて読む場合と2つある。書評によるとこの本の探求テーマは、「グローバル化が進むなか、地域の環境と文化を背負う農業が歩むべき針路」とのことだ。そして課題として「国境を越えて進む市場化にいかに対峙すべきか」を挙げている。著者は市場原理に委ねきることには否定的だが、他方市場から切り離すことにも賛成していない。「諸価値の調和的追求が必要」と説く。ここで著者は英国の田園都市の思想も参考にしながら、経済、生態環境、生活の3つの価値の総合を目指す「場の農学」と提示している、とのこと。以上より私の関心の所在は次の6点に集約される。

1.英国の田園都市の思想はグローバル化にどのように対峙したのか。対峙とは向かい 合って、突っ立っている、という意味だ。均衡的緊張状態をつくる、ということだろうか。そして今、そのような経済思想を具現化した田園都市が実際に英国に存在しているのか。存在しているならば、それはどこか。

2.英国にはアダム・スミス、リカード、マルサスと貿易を視野に入れた農業経済についての理論の歴史があるが、日本の場合、貿易を視野に入れた独自の農業経済思想・理論はあるのか、あるいは無いのか。あるとすればその特徴、無かったとすればその理由は何か。

3.経済、生態環境、生活の質のそれぞれの価値内容、価値観とはどのようなものだろうか。生態環境、生活の質についての「価値」という言葉は、価値を性格づける文化的、歴史的な文脈の中で色彩を施され、了解できるだろうが、経済の価値という表現にはやや違和感を感じる。どういう意味なのだろうか。

4.グローバル化の荒波を受けて、日本の農業の何を守り、何を変えていかなければならないのか。と同時に、どのように守り、どのように変えていくのか、現実的対応も知りたい。この点で日本農業にとってどのようなビジネスモデルが必要なのかの示唆も得たい。

5.日本の農業は日本の自然環境・気候風土に基づき、かつて中耕農業が行なわれ、複合経営を基本にしてきた、と言われる。欧米の休閑農業とは、作付け方式、生産品目が大きく異なる。この日本の自然環境・気候風土をグローバル化の中でどのように位置づけるか。

6.最後に農村における「場」とは何か。農村共同体のことを指しているのか、それとも何か他のことを意味しているのか。

以上のような問題意識を持ちながら、相田氏の著作を読んでいきたい。