「欅風」の登場人物のその後を想う

時代小説「欅風」を書き終えて一旦は登場人物達ともお別れした。ところが最近ぼんやりしている時に、その後皆はどうしているか、思い巡らすことがあった。まず子供達のこと。

波江と一緒に暮らしている千恵。郷助の息子孝吉の嫁となったおしの。2人とも忙しくも幸せな日々を送っていることだろう。千恵は畑仕事に汗を流し、弁当の販売をきっと手広くやっていることだろう。将来はきっと千恵が願っている食べ物屋さんを開店し、きりもりしていくはずだ。おしのは元気な赤ちゃんを産んで、子育て、畑仕事、それに作業所の帳簿付けで郷助一家の立派な脇柱になっているだろう。千恵もおしのも苦労の多い子供時代だったが、波江に出会い、叡基に出会い、人生を大きく変えることができた。「人生とは出会い」とはよく言われることだが、本当に「そうだ」と思う。千恵はキリスト教、おしのは仏教の教えの中で生きている。私は想像もし、期待もしている。江戸と近在に住む千恵とおしのがいつか「出会う」時がくるのではないか、と。

「欅風」執筆中に、なかなか書けなくて、暫く休んでいた時、波江が夢の中に出てきて、執筆を進めるように励ましてくれたことがあった。小説を書いた者の一種の特権は登場人物達とずっと関りを持つことができる、ということだ。

大人の中で一番気になっているのは木賀才蔵だ。その後、才蔵がどうなっているのか、思い巡らす時を持ちたい。