これからのソーシアル・デザイン

これからの時代、ソーシアルデザインを考える時に、私が留意したいと思っていることが3点ある。第一は自然との共生、これは生物多様性も含む。第二は都市と地方との相互交流と協力関係、第三は健常者と障がい者が同じステージで協働すること。まず自然との共生。最近動植物が都市に戻りつつある。「森の妖精」と言われる小鳥、エナガが東京23区で相次いで目撃されている。またカワセミもそうだ。都心の木々が大きくなり、小鳥の餌となる実や虫が増えているのがその理由とのこと。以前ドイツ国営テレビが屋上菜園に取材に来た時、その中のディレクターが言った言葉が忘れられない。「こんなに緑が少なくて、人口が1300万人もいる東京に住んでいて、皆さんは幸せなのだろうか」聞けば、ドイツの首都、ベリリンの人口は約300万人。旧いベルリンの外に緑地帯をつくりその外に新ベルリンがあるとのこと。ここ東京でも生物多様性と都市の魅力、価値は両立するはずだ。緑の多い町に人は集まる。第二は地域で暮し、仕事ができる環境をつくる、ということだ。大都市、中堅都市に行かなければ良い仕事につくことができない、という状況はやはり残念なことだ。さまざまな制約条件はあるだろうが、何とかして現実性と未来性を兼ねた日本型ビジネスモデルを構築して、新しい流れをつくりたいところだ。第三については健常者と障がい者が役割分担をして、一緒に仕事ができる仕組みを造っていきたい。多様な人々が混ざり合う社会をつくることが大事だ。

時代のパラダイムは成長から成熟へと移行しつつある。どのような成熟社会を創っていくのか、日本型成熟社会とはどのような社会なのか。この一点のソーシアルデザインは収斂していくのではないだろうか。人間にとっても社会にとっても「成熟」がキーワードになる時代になった。そして技術だけではなく生活感覚のイノベーションも。