アルゴリズムは世界を変えるか・光と影

 

20日朝6時からTEDスパープレゼンテーションを見た。プレゼンテーターはMITメディアラボ研究員のケビン・スレイビン。彼はPlayful System、つまり人間の欲求をひきつける環境やシステムをデザインする仕事に取り組んでいる。今回のテーマは「アルゴリズムは世界をどう形作るか」。アルゴリズムの本来の意味は問題解決の手順ということだが、スレイビンは世界を形づくる、と拡大している。さて彼のプレゼンを見て感じたことはアメリカは高速・高頻度株取引にアルゴリズムを徹底的に利用しているということだ。アメリカの株はアルゴリズムによって支配され、動かされていると言っても過言ではないだろう。まさに金融資本主義のアメリカだ。以前会話タイプの人工知能の会社の営業面でのお手伝いをしたことがあり、その時、アルゴリズムという用語は聞いていたが、スレイビンのプレゼンを見て、アルゴリズムについて最新の動向を知っておきたいと思い、以前本屋で見て記憶にあった本、「アルゴリズムが世界を支配する」(クリストファー・スタイナー 角川選書)を購入した。いつものようにまえがき(この本の場合は序章)とそして最後の章「第10章 未来はアルゴリズムとそのクリエーターのもの」「謝辞」を早速読んだ。第10章を読むとアルゴリズムが多くの職を奪うことが予言されている。向こう50年間の経済成長を担う大きな原動力は医療とテクノロジーとのことで、後者のテクニカルスキルや革新的なアルゴリズムを組み立てる能力は起業家精神と独創力への扉を開く、と明るい未来を示唆しているが、多くの職を奪うことも予想されている。

さて序章に書かれている2つの事柄はアルゴリズムが万能ではないことを警告しているのではないか。一つは「蚊の作り方」という本のケース。中古本で35~40ドルの本がアルゴリズムが働いた結果、最高値2369万ドルにまで跳ね上がった。2つの別々のアルゴリズムが戦ったためだ。最終的には人間が介入して正常なレベルに戻した。もう一つはギリシャ危機の際のアメリカの株式市場の激しい下落と上昇。ダウが3分間で1000ドル下落し、そしてたった1分で300ドル上昇した。この乱高下の本当の原因は分かっていないとのことだ。「アルゴリズムは一旦人間の目が行き届かなくなると不思議な行動をとってしまうことがある」最悪のケースはフラッシュ・クラッシュだ。恐らく複数のアルゴリズムが同時に働く時、何か予想を越えたことが起こるのかもしれない。複雑系の動きかもしれない。本を読みながら、アルゴリズムの光の面、無限の可能性と影の部分、破局、破壊の両方を考えて置かなければならないと思わされている。怖ろしいことは私たちの仕事もプライベートも私たちの知らないとこで既にアルゴリズムが支配している、ということだ。