アンパンマン・もう一つの物語
先日「子供たちに野菜づくりを!」ということで保育園の関係者と打ち合わせをした際、野菜栽培について子供たちに私の方からお話をする、ということになった。その際、「子供たちには例えなどを使って分かりやすくお話をしますが、野菜栽培の基本はきちんと伝えたい」と最近私が別のところで子供たちに話した内容を紹介して、希望を述べさせて頂いた。そして参考として、やなせたかしさんのアンパンマンの歌の歌詞を読んだ。そこにはやなせさんのこどもたちに対する姿勢が象徴的に表れていると思うからだ。さて話が一通り終ったところで、私の隣に座っていた女性(高齢者センターのスタッフで若いお母さん)が少し涙ぐんで、こう言った。「私、こどもの頃にアンパンマンって言われていたんです。・・・頭を取ってみろ、とか」彼女はアンパンマンと呼ばれていじめられていたようだ。彼女にとってアンパンマンには個人的には悲しい思い出がある。そして20歳頃、地下鉄に乗っていた時、近くに立っていた幼児から突然手を握られて、こう頼まれたとのことだ。「アンパンマン、空を飛んで」彼女は子供の夢を壊したくないと咄嗟に思い、こう答えた。「今は地下鉄の中だから飛べないんだよ」と。物語には一般に流布しているメジャーな物語(マスメディアなどを通じて)と同時に、個人それぞれの物語があることに改めて気付かされた瞬間でもあった。大きな物語だけではなく、一人ひとりが胸の中にしまっている小さな物語。それにしても彼女には辛かったことを思い出させてしまった。天国のやなせさんはどう言ってくれるだろうか。