インタービーイング(相互存在)の思想とビジネス生態系

高名な仏僧ティク・ナット・ハン師はすべての存在が相互に関係していると言う。これは仏教の「縁」から来ている思想なのだろう。近代科学の発展は要素に還元して、個々の要素を科学的に分析し、合理的に説明するという方式を取ってきた。それはそれで間違っていないとは思うが、一方で限界も見えてきたのではないだろうか。特に自然科学の場合、私達がまだ自然を全体として「対象化」できていない。つまり部分的、断片的にしか把握していない、という問題がある。最近では複雑系の科学も生まれてきているが、それは取りも直さず人間には科学的・合理的に自然全体を「対象化」できないということの、人間の側からの「告白」かもしれない。そのような時代に、ティク・ナット・ハン師の教え、インタービーイング(相互存在)の思想は現代人に、救いと安らぎを与える。そこには分離、対立を超えるものがある。

ビジネスの世界でもそうでないだろうか。最近の一つの傾向として「競争から共創へ」がある。個々の会社が競争している状態から、共存・共創に向かい始めている。この共存・共創は小企業同士のこともあるだろうし、小企業と大企業という組み合わせも考えられる。

ビジネスの世界でもインタービーイング(相互存在)の思想を大切にしたい。インタービーイングを支えるものは信義という企業倫理だ。