オープン・サービス・イノベーション 「サービス」の定義について

 

「ビジネスをサービスという枠組みに入れると、ビジネスに対する考え方が変わる。顧客との関係の築き方、ビジネスの構築法、差別化や価値創出の手段といった、すべてのものがサービス志向になる。これがオープン・サービス・イノベーションにとっての基本コンセプトである」とチェスブロウは主張する。このような主張を背後から支えているのは、サービスに対する新しい定義だ。チェスブロウによるとサービスの語源はラテン語では「奴隷」という意味で使用人を意味する「サーバント」も同じ語源とのことだ。最近は「サーバント・リーダーシップ」という新しい言葉があるが、これは皆に「仕える」リーダーという意味のようだ。さて、チェスブロウによると「サービス」には別の定義があることを紹介している。「サービスとは『ある経済主体に属する人の状態ないし財の状態に、他の経済主体の活動の結果もたらされた変化」この定義はどうも経済学者バウモルによるもののようだ。少し抽象的な定義なので、私自身まだ十分に理解していると言いがたいが、米国政府は、北米を対象とした製品分類体系であるNAPCSでのサービス商品の定義の基礎として同様の定義を用いているとのことだ。なぜこのような定義が出てきたのか、バウモルの著作にあたることができれば良いのだが、注釈を読む限り難しそうだ。ただこの定義からは、サービス活動が経済主体に関わる活動であること、また変化を提供し、結果を与える活動である、ということは理解できる。しかしこれだけでは、通常の経済活動の範疇を越えないという印象を与えるかもしれない。重要な部分は「変化」だ。なぜ定義にこだわるのかと言えば、定義こそビジネスの基礎を見直す作業だからだ。簡単に言えば、定義は「そもそもそれは何のか」を明確にする基礎的な事柄でもあるからだ。