シニアは総合的バランスの回復を目指す

シニア世代にとって大事なことはバランスだ。現役の時はなかなか自分の思うように行かなかったことが多かったが、シニア世代はバランスを回復する時期とも言える。まず仕事と家庭の両立。仕事中心の歪みを改善するワークバランス的発想も、実行も可能になってくる。家庭生活の充実を図ることが大事だ。生活するための仕事から、自分が本当にやってみたかったことに取り組むことができる、というのは嬉しいことだ。生き甲斐のある第二の人生。第二は人間関係のバランス。仕事中心、利害関係中心の人間関係だけではなく、それ以外の地域の人間関係、趣味・遊びの人間関係。波長の合う人、思いを共有できる人は仕事以外にも大勢いる。現代はソーシアルテクノロジーが発達しているので、ネット上の人間関係も可能だ。第三は人生の楽しみ方のバランス回復。都市生活だけでなく、自然とも触れ合う素朴な、ナチュラルな生活も取り入れていきたい。第四は自分の人生に対するバランスの取れた見方の回復だ。「人生とは失うものと得るものが、最後にはちょうど釣り合うようにできている」(「天下 家康伝」 火坂雅志)。さらに言えば、失敗とか悲しみ、挫折とか思っていたことの違った面、プラスの面が後になって見えてくる。「苦しみに会ったことは、私にとってしあわせでした」(旧約聖書 詩篇119:71)との言葉が本当に分かるのは、シニアの特権でもある。第五のバランス回復は頭脳労働と肉体労働のバランスだ。頭ばかり使う労働は心に大きな刺激と同時にストレスも与える。家庭でのDIYも農作業などの肉体的労働も思った以上のストレス解消効果がある。

シニアは総合的バランスを回復する時期と私は思う。そこに一回切りの人生の醍醐味があるのではないか。