スケールメリットとデメリット 成熟社会の組織デザイン

 

私達の意識の中には「大きくなることはいいことだ」という確信めいたものがある。会社を大きくするために努力をする。また組織を大きくする。大きな建物を建てる。しかしただ、闇雲に大きくすることが正しいことなのだろうか。最近身近な例で、そうとも言えないのではないか、と強く感じているケースがある。このケースではリーダーの人々が大きな会員組織にしたい、そのためには大人数が収容できる建物が必要だ、ということで多額の借金をして大きな建物を建てた。何回も行なわれた会議では大きな組織にするためのメリットが列挙された。デメリットについての指摘があったが、大勢に対するいわば「反対意見」として退けられた。また大きな単一の組織ではなく、複数の組織に分けてネットワーク化する、という選択肢もあったが、リーダーはその選択肢を問題外とした。そして大きな建物は建った。現在大きな組織はどのようになっているか。活気を失い、全てが事務的、いや官僚的になり、その結果独裁的にもなった。懸念、いや予想していたようなスケールデメリットが顕著になってきている。建物の建築費の返済が大きくのしかかっている。今後この大きな組織は長い低迷期に入り、衰退していくことだろう。組織にはその組織が目指していることに相応しい身の丈、というものがある、と私は思う。小で留まるべきか、中で留まるべきか、どうしても大きくすべきか、組織サイズについての的確な判断はリーダーにとって一番重要な判断の一つではないだろうか。成長させる、大きくする、という意欲の底には「野望」の精神が巣くっているかもしれない。人間的野望は判断を狂わせ大きなツケを組織のメンバーに強いる。成長経済、成長第一主義から時代は成熟経済、成熟社会に既に移行している。このことを肝に命じなくてならない。4月の日本型ビジネスモデル事例セミナーでは大あるいは中から小へのビジネスモデル転換について取り上げる予定だ。