ストーリーとしての戦略とビジネスモデルの動画化

ビジネスモデルについて一つの批判がある。それはモデルという言葉から来るものであると思うが、固定的な「静止画」というイメージである。「ストーリーとしての競争戦略」を書いた一橋大学の楠木建教授もそのようなことを言っている。また私の友人の中にもそのような指摘をする人もいる。私も同感だ。その意味ではビジネスモデルの「動画化」が必要となる。私自身はビジネスモデルは本来、日々変化してやまない外部環境との関連の中でデザインされ、進化していくものという捉え方をしているので、ビジネスモデルは動画であるべきだ、という考えを以前から持っていたので、「動画化」にはイエス!だ。それではどのようにして動画化するか。私の場合はそれは「ストーリー化」だった。ビジネスモデルの全体的構成を固めてから、ストーリー化に着手する。そうして実際に制作したものが、「サンクスペアレンツ(親孝行旅行パック)」であり、今回書いた時代小説「欅風」であった。「サンクスペアレンツ(親孝行旅行パック)」は日本の里山を都会人の第二の故郷にするためのビジネスモデルのストーリー化であり、「欅風」は小企業・零細企業が特長・優点を磨いて独自のクオリティ企業になるためのビジネスモデルと「無私」という日本人独得の精神のビジネスモデル化であった。

なおストーリーをつくるには一定のセオリーがある。私が参考にしているのは、「ビジネスモデルジェネレーション」の<ストーリーテリング>と「小説家の経営術」(西川 三郎著:幻冬舎)だ。一番大切なことはワクワクするようなストーリーをつくることなので、これだけはどうしても伝えたい、この夢を共有し、実現したいという、書く人の熱い思いが不可欠となる。おそらくこの思いがなければ人に伝わり、人を巻き込むストーリーは生まれてこないのではないか。

もう一つ、ビジネスモデルの動画化に必要なのは「ビジネスモデルジェネレーション」の中で展開されている9つのブロックの相互関係のベクトルづくりとブロックの平面化から立体化の作業ではないかと考えている。なぜならビジネスモデルは人間の身体のように有機的な一体物であり、立体化は価値の利益への変換効率に大きな影響を与えると思うからだ。