ソーシアルデザインとビジネスモデル

 

ソトコト6月号の続き。この本でそれぞれの野菜生産者を紹介しているが、紹介のポイントが秀逸だ。ポイントは、農ビジョン、就農年、未来をつくる野菜、そしてわたしの農書。農書には農業関係の本から経営関係、エッセイ、漫画など多様だ。今回の特集ではソーシアル、ソーシアルな人がキーワードになっている。ソーシアルとは社会や環境をよりよく豊かに変えていく働きを意味するとすれば、彼らは「農」を通じてソーシアル・ワークを推進、展開している。「A級グルメ」に到達する前に邑南町で町の産業振興を担当する寺本英仁さんが肌で感じたことは重要なポイントだ。「儲かることが町を元気にするのではなく、作ったものが売れることが町の人を元気にする」利益追求を目的とするビジネスと町を元気にするソーシアル活動の分岐点がここにある。作ったものを売る、売り切るということは特に有機農産物の場合、価格のこともあり、簡単なことではない。都市生活者の野菜購入のパターンを変えることは大きな難題である。解決策の一つは宮城県鳴子峡の米に先例があるように、個々のものを売るのではなくて、コトを、そこでしか味わえない喜び、楽しさを実感してもらうことだ。そのためには町全体の魅力を情報発信して、外からお客様に来て頂くことが大事だ。「農」の世界に若い人たちがそれぞれのバックグラウンドを持って入っていく。この流れが奔流のようになったら日本の農業も大きく変わっていくだろう。ソーシアルビジネスこそ、新しいビジネスモデルが次々と産まれていく土壌かもしれない。