テレビドラマ「隠密同心 大江戸捜査網」を見て感じたこと

新年特番のドラマを見た。夜の番組で午後11時迄、約3時間。最初は他に特に見たい番組も無かったので何となく見ていたが、途中からこの番組の背後に流れている主張は田沼意次の経済政策の見直しであり、再評価ではないかと思わされた。田沼意次は商人優遇の重商主義の政策を推し進めた賄賂政治家という烙印を押されている。日本史の教科書でもそのように書かれていたと記憶している。
しかし彼の進めた政策を見てみれば一概にそうとは言い切れないような気がする。農民に一方的に増税する八代将軍吉宗の路線の修正を試み、また初期的ではあったが資本主義化していた経済社会に合わせて商人と産業の発展を視野に入れた税収の多角化を図ったと思われる。意次にとって不運だったのは、都市に農民が職を得るために流れ込み、結果的に生じた予想以上の農村の荒廃であったのではないか。農村対策が十分にできなかったことが社会不安を招き、意次を追い詰めた。
幕府財政の悪化を食い止めるために多様なアイデアが必要であり、意次は実力主義で人材を登用したと言われる。
失脚した意次は徹底的に処罰されたとのことだ。見せしめだったのだろう。それは意次の重商主義に対する歯止め的意味合いもあったのではないか。
隠密同心では意次を極めて好意的に描いている。意次の娘早苗が5人の隠密同心の見送りを受けながら、吉原の花魁の言葉を小弥太に告げた後、平賀源内、後の葛飾北斎と船に乗って蝦夷に向う。「私はあなたを思い出すことはない、なぜなら片時もあなたを忘れないから」。二度と後ろを振り返らず船に向う早苗の真っ赤な目が印象的だ。父意次の夢を実現するために早苗は蝦夷をまっすぐに目指す。
吉宗の時代に吉宗と対照的な政策を採った藩主がいた。尾張藩の徳川宗春だ。彼の規制緩和策は庶民が伸び伸びと活動できるようにしたものであったが、結局吉宗によって謹慎に追い込まれてしまった。
いつも1時間のドラマを見ている者には隠密同心は3時間だろうか、長くて疲れたが、この江戸時代の経済政策について考える機会となった。また現在のアベノミクスについても。