トマ・ピケティ氏の指摘と提案-クローズアップ現代を見て

今晩のクローズアップ現代を見て、格差の問題とその格差を生み出した構造に、私達一人一人が「経済学は難しい」などと言わずに目を向け、向き合わなければならない、と思わされた。資本主義は資本が資本を産み出す制度だ。資本主義の初期は生み出された資本はまた生産過程に投入され、拡大再生産のサイクルをつくり、経済成長を促した。

一方資本の一部は土地の購入、株式の購入に向い、不労所得、配当を所有者にもたらすようになった。カネがカネを産み出す金融資本主義だ。金融資本主義を体現したのは他でもないアメリカだ。そして現在は資産主義。持っている者はますます豊かになり、持たざるものはますます貧しくなる。格差に歯止めをかけるため公正な分配を目指した経済学として厚生経済学もかつて登場した。しかし格差を是正するためにはピケティが言うように富裕者層への累進課税とタックスヘブンに逃げることができないような国際的な資金の流れの透明化ではないだろうか。富裕層はもっとおカネを稼ぐことよりも、今の財産が減らないことに神経を使うとのことだ。税制の改正には富裕層の反発も大きいことだろうが、格差拡大が社会の不安定化につながることをピケティが改めて教えてくれたと思う。社会が安定していなければ、資産も宝の持ち腐れということにならないだろうか。