バランスシート不況と労働参加率

米国エール大学のシニアフェローのスティーブン・ローチ氏が米国の景気回復に懸念を示している。2月10日日本経済新聞朝刊グローバルオピニオンでローチ氏の見解が示されている。ローチ氏が一番問題にしているのは、債務返済優先のバランスシート不況だ。米経済の7割を占める消費需要はリーマンショック後の景気低迷の大きな要因と言われているが、個人消費を支えている家計の所得債務比率は109%で極めて高い水準にある。家計のバランスシート修復はまだ途上だ。米国の消費者は日本と比べると個人貯蓄率が低い。その意味では家計のバランスシート修復にとってFRBの金融緩和の匙加減は非常にデリケートなものになるのではないか。ゼロ金利政策が転換されると返済コストが上がり、家計の所得債務比率が悪化する恐れもある。

一方日本でも金利政策については米国とほぼ同じような状態が続いているが、日本は個人貯蓄率が高く、消費者の基本行動は節約型なので、家計のバランスシート不況は米国ほどの懸念材料にはならないのではないか。

日本が現在抱え込んでいる大きな問題は3つあると思う。少子高齢化、労働人口の減少、そして1000兆円に届く国債の残高。国の年間予算の半分近くが国債によって賄われているというのはなんとも異常だ。3つともいわば構造的な問題で、短期間の解決は期待できない。どこから手をつければ良いのか。ティッピング・ポイントは何か。単純に考えるとやはり「働いて返さなければならない」。その意味では労働参加率を上げることが大事だ。

つまり生産年齢人口に占める労働人口の割合の引き上げということになる。どのようにして労働人口を増やすか。カギは農業かもしれない。