バーチャルからリアルへ

ビジネスの世界ではITは極めて有効である。しかし人間と人間の関係ではどうであろう

か。人間関係には信頼性が欠かせないが、バーチャルの世界ではその信頼性の根拠を担保

することが難しい。ネットを介した犯罪が増えているのも当然かもしれない。私の個人的

印象だが、現在人々はネットの便利さを感じつつも、ネット中毒、ネット依存症的症状を

危うさとして意識し始めているのではないだろうか。一言でいえばネット社会に飽きた、

絶えず消費され、消耗され続ける情報に疲れと空虚感を覚えているのではないだろうか。

一方リアルの世界ではつねにリアルであるが故に新しい発見があり、消耗され尽すという

ことがない。人々はリアルに戻りつつある。しかしそう簡単にリアルの世界に戻ることが

できるのだろうか。リアルの世界に自分の居場所が見つからなくて、バーチャルの世界に

逃げ込んだという経緯があったのではないか。リアルの世界はリセットすることは出来な

い。リアルの世界は人間にはコントロールすることができない。リアルの世界はいつも優

しいわけではない。人はリアルの世界との関係をもう一度じっくりと考えなければならな

いのではないか。本来、人はリアルの世界の住人なのだから。