ビジネスモデル 今年1年を振り返る

 

今年一年を振り返って思うことはビジネスモデルという言葉が普遍性を持ち始めた、ということだ。数年前ビジネスモデルというと「エッ、それ何?」と言う顔をされたこともあった。まだまだ特殊性の段階だった。当時は「複雑系」という言葉が流行していた。ところでなぜビジネスモデルという言葉が普遍性を持つようになったのだろう。その理由を考えてみたい。

まず第一に挙げられるのは時代の閉塞性だ。もっと言うならば資本主義体制の制度疲労を乗り越える「何か」が求められている。

第二は企業が「利益とは何か」を真剣に考えるようになってきた、ということだ。正確に言うならば自社の利益はどのようなタイプの利益なのか、そしてその利益タイプは今後とも有効なのか、そうではないのか、を考えざるを得なくなってきている。さらに利益の量的側面だけでなく質的側面にも目を向けられるようになってきた。つまり顧客にとって有効な価値を生み出しているかどうか。価値提案力が企業に求められている、ということに他ならない。

第三は社会が企業に対して公共性を求め始めている。社会にとって無くてはならない、社会を良くするプレーヤーとしてのあり方を求めている、ということだ。これは単なる社会貢献に留まらないだろう。

第四は価値観が多様化している時代だからこそ、「思いの共有化」が全ての組織単位で求められ始めている、ということではないか。チームワーク、そして誰でも主体的に仕事に関わることのできる仕事の、真に意味での民主主義化が進んでいる。一人の知恵だけではなく、多くの人達の知恵とコミットメントを集約する時代になってきている。ITの技術がこの動きに拍車をかけているのは言うまでもない。

第五は不可能を可能にするには新しい仕組みを創らなければならない、ということだ。今まで切実なニーズがあるにも拘わらず「採算に合わない」という理由で切り捨てられていた分野に優れたビジネスモデルがデザインされ、導入されることによって、ニーズを満たし、採算も確保でき、継続性も担保される。

ビジネスモデルのデザイン、運営に果たすITの役割は恐らく限りないものだろう。ビジネスモデルのデザインにITの技術を組み込むことは、今後当たり前になっていくはずだ。

今年一年、ビジネスモデルの本が多く出版された。来年は理論を学び、自分の事業を独自のビジネスモデルで「実装」し、実践しつつ試行錯誤を繰り返しつつ、また理論に戻る・・・そのようなサイクルを回す一年になりそうだ。