ビジネスモデルと価値内容・性格

 

ビジネスモデルをデザインする場合、誰にどのような価値を提供するか、ということが基本となる。そのために顧客をセグメントして価値提案を具体的にする。「ビジネスモデル・ジェネレーション」でもそのように説明している。「価値提案とは、顧客の抱えている問題を解決し、ニーズを満たすもので、顧客がなぜその会社を選ぶかの理由になります。価値提案は、特定の顧客セグメントが必要とする製品とサービスの組み合わせであり、企業が顧客に提供できるベネフィットの総体と言えます。」ここで問題となるのはあくまでも企業と顧客である。ところが現在読んでいる本の中で経営学者のマイケル・ポーターの次のような言葉が紹介されているのを知り、価値についての考え方をさらに拡げ、深めていく必要性を感じた。「社会的価値の創造を通じて経済的価値を創造する」ポーターは事業を通じて社会的な課題解決を支援し、生活者や地域コミュニティとの共有価値を生み出していくCSV(Creating Shared Value)への転換を提案する。企業が提案する価値を顧客が受け取るという限定的なものではなく、企業と生活者、地域コミュニティが共有できる価値を「共創」という考え方で継続的に創り上げていく。企業は価値創造をより「社会化」することで社会の共感、支持を得ることを求められている。ところでこのような考え方は既に江戸時代の日本にあった。「稼ぎ」と「務め」だ。恐らく今日のビジネスモデルが目指す方向は成熟した文化、成熟した人間、成熟した経済観、つまり成熟した社会なのではないだろうか。