ビジネスモデルと顧客セグメント・今治市の地産地消から

小川町の有機農業フォーラムで愛媛県今治市の農林振興地産地消推進室長の安井 孝氏の講演はまさに地産地消のビジネスモデルそのものだった。安井氏は地産地消の定義をする。

地元、安全、新鮮、美味しいが基本要素であり、有機農業は単なる経済活動ではなく、地域が自立するための運動と捉えている。詳しくは同氏の「地産地消と学校給食」(有機農業選書 コモンズ)を読んでいただけたらと思うが、講演の中で私が感心したのは、顧客のセグメントだった。当初有機農産物の販売対象として考えていたのは主に主婦層だったが実際にやってみると反応は今一つだった。そこで子供たちに顧客セグメントを変えた。子供達が地元の有機農産物に学校給食を食べて関心を持つ。それを親に話す。また長期的には子供時代に有機農産物に関心を持ち、食べた子供達が大人になっていく。この顧客セグメントの変更が今治市の地産地消活動の発展につながったと言っても過言ではないだろう。

私達は有機農産物は子供を育てている若いお母さんたちに受け入れられ、支持されるのではないかと考える。しかし多くの若いお母さんは「価格選好性」が強い。限られた予算の中で献立を考えるとなると、そうなるのは当然かもしれない。しかし、子供が確かな知識を持って中国産の安い野菜ではなく、今治産の有機野菜を食べたいと言えば、お母さんが購買方針を変える可能性は高い。私は最近、屋上菜園の利用者、つまり顧客は高齢者と子供達ではないかと考えているが、安井氏の顧客セグメントの変更は大きな示唆を与えてくれた。顧客セグメントを間違えるとビジネスモデルは機能しないからだ。