ビジネスモデルにとってのストーリーの重要性

 ビジネスモデルをつくる上でストーリーをつくることは欠かせない作業だ。目的はビジネスモデルの新しさ、革新性、差別化要素を「見える化」することであり、なぜこのビジネスモデルを実現する必要があるのか、関係者を感動と共感で動かすところにある。ここで論理と物語のそれぞれの特徴について簡単に整理してみたい。

論理は伝達プロセスにおける「発信者と受信者の関係を考慮していない。また主張が普遍的に適用されることを前提とした表現なので、読者は主張が真なのか偽なのか、適切なのか不適切なのか判断しなくてはならない、すなわち読者に「対決」を迫る。

一方物語は対決を迫らないので読者は安心して読むことができる、話の内容は個別的だが、どんな意味をそこから受け取るかは読者に開かれている。物語は理解とは違った共感、感情移入、想起、想像というプロセスを読者に与える。(出典:「物語力」で人を動かせ)

新約聖書を例にとってみると論理的なのはパウロ書簡などであり、物語的なのはマタイ、マルコ、ルカの共観福音書であり、ヨハネの福音書だ。新約聖書は論理と物語で構成されている、と言えるかもしれない。もし論理だけではこれほどまでに普及しただろうか、私にはそのようには思われない。ここから先は新約聖書の成立過程にかかわることになるが、イエスの言行録がまとめられ、その後パウロ書簡が書かれ、共観福音書、ヨハネの福音書・・・というように物語は後になって書かれた。さてビジネスモデルのための物語に戻る。ビジネスに関わる人々はロジカルシンキングとか論理的な文章を書くことには長けているが、物語を書く能力はどうだろうか。私のささやかな経験では、この能力もとにかく書いて練習するしかない。最初はA41ページから始めたら良いと思う。そして「シナリオ」とか「小説」を書いてみることは役に立つ。人に読ませる意識で書くことが大事だ。サンクスペアレンツの「シナリオ」を書いた時、また「憧れのベジータライフ」を書いた時、途中から登場人物が動き出すのを感じた。登場人物と一緒に物語のワールド(世界)書いていく、というイメージだ。そしてどこに感動のポイント(顧客への価値提案)があるか、どこでお客様がお金を払ってもいいと思ってくれるか(利益の源泉)が見えるようになれば、ビジネスモデルのストーリーらしくなっていく。そして、更に大事なことはビジネスモデルのストーリーは実際にそのビジネスモデルがシステムとして機能するか、円滑に動くか、システムチェックするためのシュミレーションになるということだ。物語を書くにはセオリーがある。ビジネスモデルの物語にもセオリーがある。それを見つけ、マスターすることがビジネスモデルの成否を左右する。