ビジネスモデルの「価値」について

ビジネスモデルという用語はアメリカで最初に生まれ、使われるようになった。当初は新しい経営理論が生まれては消えていくように、ビジネスモデルという経営用語もそのように見られていたのかもしれない。しかし、現在ではビジネスモデルという言葉は良く使われる、いわば市民権を得た経営理論になっているようだ。私が最初にビジネスモデルという言葉に接したのはアメリカの経営学者の本だった。ビジネスモデルとは一体何か、何を目指すものなのか、中核的構成要素は何なのか、何が今迄の経営理論と違うのか、どのようなところに新しさがあるのか、そしてなぜ今、ビジネスモデルに取り組む時代的必要があるのか・・・いくつかの疑問、問いを抱えながら、内外のビジネスモデルについて書かれた本を読んだ。読後感としては、ビジネスモデルがイノベーションと関連づけられて定義化されているケースが多かったように思う。そして「ビジネスモデル・ジェネレーション」では「ビジネスモデルとは、どのように価値を創造し、顧客に届けるかを論理的に記述したものである」と定義された。この定義が到達点かもしれない。特徴的なのは価値だ。価値を創造すること。そしてその価値を顧客に届けることによって、つまり需要に応えることによって利益へと転換する。それではなぜ価値が最重要の要素となるのか。ここで少し立ち止まる必要を感じる。価値論についてはマルクスの労働価値説が思い浮かぶ。ところで現在の価値論については客観的な価値尺度があるのだろうか。ビジネスモデルの価値論は顧客の問題を解決し、ニーズを満たすことにある。消費されて初めて確認できる価値なのだ。その意味では価値にも程度の差が出てくる。いかに本質的な、深い価値提案をするか、それは一重に顧客理解、顧客洞察にかかっている。ビジネスモデルの優劣はそこで決まるのかもしれない。厳しいのはテーブルから離れ、現実に飛び降りて、どのような結果を出すか、というところにある。