ビジネスモデルのプロトタイピングについて

「ビジネスモデルジェネレーション」の再読を続けている。この本の第3章、デザインの中で提案されている「プロトタイピング」というツールは非常に興味深い。しかし私にとっては理解の難所の一つとなっている。そのこともあり、この個所は何回か読んでいる。それでもまだ十分理解できたとは思っていない。

最初は私達がよく使う「叩き台」と理解した。サウスウエスト航空の格安航空券のビジネスモデルは飛行機の中で、ナプキンにスケッチが描かれたことから始まったというエピソードを思い出した。

しかしこの本の中で提案されているプロトタイピングはそれに留まるものではないようだ。

まず押えておくべきポイントがある。

1.アイデアをあまり早くから固定しない

2.新しい可能性を探求するためには、可能な限りあらゆる方向性を検討する

3.あらゆるコンセプトは初期的なプロトタイプによって具体化される(これは166Pの「出版における8つのビジネスモデルのプロトタイプ」が参考になる)

以上3つは拡散思考を特徴とする「デザイン精神」によって促進される、探求のプロセスとなる。

そしてこのプロトタイプによる探求の旅は、ビジネスモデルキャンバスがあってこそできることなのだ。ビジネスモデルキャンバスは未踏の世界に深く入っていくための、心強いナビゲーターの役割を果たしてくれる。もしキャンバスがなければ、未踏の世界の手前で中途半端に立ち止まってしまうことだろう。

プロトタイプには異なるスケールがある。ナプキンのスケッチ、詳細なキャンパス、ビジネスケース、フィールドテスト。段階的に進んでいくスケールだ。

その上で、実際にビジネスモデルをデザインする者としては、やや簡略化して以下のような使い方をしてみたいと思っている。

1.ナプキンのスケッチであらゆる可能性、方向性を探求する。(「出版における8つのビジネスモデルのプロトタイプ」がそうであるように)

2.そのプロトタイプ毎に3つの詳細なキャンパスをつくる。

 

ナプキンスケールのプロトタイプが8つあれば、詳細キャンパスをそれぞれ3つつくるとして、8X3=24となる。しかしそれだけの作業は時間的にも大変だ。ということで、私は8つのプロトタイプをつくって、それらを3つに絞るようにしている。そうすれば3x3=9となり、これは一人作業としても十分可能なレベルだ。

プロトタイピングは仮説の検証ではなく、未踏の世界での新しい可能性の発見である。長い旅であることを覚悟しなければならない。なぜなら、新しい革新的ビジネスモデル(企業が生きるための生命の泉)に到達するためのアドベンチャーだからだ。土地に張り付く農耕民族である日本人にはちょっと馴染みにくい発想かもしれない。しかし、現在はすべての人は、また企業はグローバル世界の住人となっている。

私達は皆、ビジネスモデル発見の旅に誘われている。ビジネスモデルキャンバスは旅の友、ナビゲーターとして活躍してくれるはずだ。