ビジネスモデルは冒険の旅

 

プロトタイプとは、新しい可能性を探求するための考える補助をしてくれるものであり、この探求の精神をボーランド教授は「デザイン精神」と呼んでいる。このデザイン精神の特徴は、洗練させるアイデアを検討し、短時間のうちの破棄し、さまざまな可能性を試してみる時間をもつことであり、デザインの方向性が固まるまでの不確実性を許容する。(「ビジネスモデルジェネレーション」P164

この指摘は極めて重要である。不確実性を許容するということは確かにビジネスマンにとっても、経営者にとっても自然にできることではない。できるだけ早く不確実性を解消し、結論に達したいと思う。この思いは本能的と言っても良いだろう。現在のビジネスではスピードが何よりも重視される。その意味ではビジネスモデルのデザインはこの本能と時流に抗する性格を持っている。それではなぜ私達はデザイン精神を持たなければならないのか、もしこの精神を欠いているとどのような問題、結果を招来することになるのか、確認してみたい。ビジネスモデルは自分の頭に浮かんだ絵に餅を描くことではなく、一歩先の未来を視て、そこに自分のイメージを投影する行為であるが、未来は不確定であり、複雑な関係構造を持っているため、絶えず流動し、変化している。未来は静止画ではなく動画なのである。従い投影する自分のイメージとかアイデアも動画の中で動いていく。従い未来という不確定の動画の中で、自分のイメージとかアイデアに確かな可能性と根拠を持たせるためには、複合的というか立体的、動態的なアプローチが必要になってくるのである。その意味ではビジネスモデルの「モデル」は「ダイナミックス」と表現を変えた方が良いかもしれない。ビジネスモデルが完成するということは私達が未来に迫っていくだけではなく、未来が私達に具体的イメージを帯びて迫ってくる、というシーンが欠かせない。その確信が得られた時、ビジネスモデルの成功が見えてくる。不確実性の中の探求を続けていく時、私達はいくつものオプションの道を見出し、歩く。それはあたかも冒険のようだ。冒険というと「危険を冒す」という意味をすぐ思い浮かべるが、冒険はラテン語のアドベントゥーラという動詞から来ており、その意味はある出来事が起ころとしている時に、その中にあえて入り込んでいくことと言われている。デザイン精神とは冒険の精神なのである。ビジネスモデルが完成する時は、オプションも含め、全てが統合される時でもある。もしこの冒険の精神を持たずに結論を急ぐと、それは平凡かあるいは非現実的なものになる可能性が高い。この冒険精神とビジネスモデルについては機会があれば具体的事例に基づき検討してみることにしたい。