ビジネスモデルを活かすも殺すも人

 

15年前のことだが、ジャスコの常務取締役をされていた小嶋千鶴子さんが80歳になられた時、「あしあと」という回想録を自費出版された。(非売品。求龍堂)新聞に掲載された書評を読んで、求龍堂に手紙を書き、できることなら1冊譲っていただけないかとお願いした。暫く経ってから小嶋さんの手紙と共に、本が届いた。現場で実務を担当していた責任者が書いた本で迫力、説得力が学者、評論家が書いた本とは全く違っていた。その中で特に印象に残ったのは「虚構性の強い人間」という個所だった。真実の中で都合の悪いことを打ち消して、事実の一部分だけをもって真実にしようとする人間のことを言っている。この文を読んで、自戒の言葉とした。それにしても企業組織の中で真実を真実として報告することは勇気のいることである。報告を聞く方には度量と胆力が求められる。ジャスコが発展し、イオンとなり、現在はダイエーも呑み込み(株主筆頭19.85%)、日本最大のGMSと発展した。小嶋さんに鍛えられた人材がこの発展を担ってきたのだろう。

昨日日本橋を歩いていて、大黒柱に車をつけよ、という岡田屋(ジャスコの前身)の家訓を不意に思い出し、小嶋さんのことを思いだした。元気でいらっしゃるだろうか。