ビジネスモデルを確立できずに会社清算

 

私の知人がIT関係の会社の社長をしていたが、とうとう今年の夏に会社を清算することになり、現在清算業務を進めている。この会社の社長とはかれこれ7年以上の付き合いだが、心配していたことはビジネスモデルが明確になっていないことだった。私自身社長の相談相手のような立場にいたので、この点について触れたことが何度かあったが、親会社からの早期収益化の圧力も日増しに強くなり、開発方針も親会社の強い制約を受けるようになった。その結果、短期的な成果を求めて試行錯誤を続け、終に清算に到った。私としてはこのIT会社の独創的な技術は農業分野と高齢化分野でこそ活かせると踏んでいた。そのためにはそれぞれの分野の開発パートナーとのコラボが必要だった。途中迄は進んだが、結局それ以上は進めることができなかった。私自身10年前に会社を自主廃業し、1年半かけて会社を清算した経験がある。実際に清算業務をやってみて「こんなに大変なものか」と思い知った。清算業務が結了した後、暫くは何もする気になれないくらい心身が疲れていた。このIT会社の場合は親会社が上場企業なので、信用不安は防げるだろうが、社員の解雇、資産の処分などで社長の心身にかかる負担は大変なものだろう。清算業務の最中に大切なことは清算が完了したら、「こんどこそ、こういう仕事をやりたい」というイメージをしっかり持って、日々自分に言い聞かせることだ。それが明確になればなるほど、辛い清算業務にも耐えられる。彼の再出発を祈るばかりだ。