ビジネスモデル・マインド   顧客セグメントと価値提案

 

私たちがビジネスモデル・マインドを持つ時とはどんな場合だろうか。今回は自分の仕事が減ってきた時、また売上が伸びなかったり、減ってきた場合を取り上げてみよう。私たちは、「今は大変だけどそのうち良くなる時がきっと来る」と言い聞かせ、不安感とか危機感を和らげようとする。しかし、事態が好転せず、悪化していると思わざるを得ない状況にいよいよなった時、追い詰められて打開策を真剣に考える。「どうしたものか。このままでは食べていけない。将来の見通しも暗い」と。私の叔父さん夫婦は江戸川区で洋品店をやっていた。スーパーが進出してきてからは、それまで贔屓にしていてくれたお客様がスーパーに流れ、売上もガクンと下がり、厳しい経営状況となった。この局面を打開するために叔父さん夫婦は考えた。そして出した結論が「自分たちの洋品店を必要としている地域の高齢者に絞って品揃え、販売活動をしていこう」。ビジネスモデル的に言えば、顧客セグメント、つまりお客様を絞り込んだ。これは実際にやっている当事者にとっては勇気のいる決断だ。そして今迄やっていなかった電話で注文を受けて、お客様のところに商品を届ける、というサービスを新しく開始した。叔父さんの頭の中にはお客さんの体型、好み、購買履歴がデータとして入っている。こうして危機を乗り越え、85歳迄洋品店を経営してきた。というより地元の高齢者が叔父さんの店を必要としてきた。お店の品揃えを見ると高齢者のお客様が日常必要とする品々が揃っていた。高齢者は年金生活者が殆どだろうから贅沢な高価なものは買えないが、身体に優しいものが欲しい。話は大きく変るが世界に冠たるトヨタ自動車もかつて過剰在庫と労働争議で潰れかかったことがあった。見込み生産から受注後生産に切り替え、短納期実現、カンバン方式へとビジネスモデル転換を果たしていった。6年前になるだろうか、名古屋に所用で行った時、豊田博物館に行き、豊田織機、豊田自動車と展示物を見て回った。大変な危機をビジネスモデル転換に導いた当時の豊田自動車の経営者の写真を当時見ながら、当時の豊田社長以下の経営者の凄さ、胆力に圧倒されたことを思い出す。 ビジネスモデル・マインドの出発点、は危機の只中にあって未来を見つめつつ、将来の繁栄につながる道筋を見つけ出す洞察力と前に向かって踏み出す実行力とイノベーションのために身を粉にする献身力だ。

会社、事業の大小に関係なく、このようなビジネスモデル・マインドは共通しているのではないか。常に危機意識を持つこと、それがビジネスモデル・マインドを発動させる。