ピンチはチャンスの意味・ビジネスモデル的に考える(1)

 

優れたビジネスモデルはピンチ・危機の中で産まれる、と言っても過言ではないだろう。

クロネコヤマトは昭和40年代後半、商業貨物輸送の市場で競争に負け、赤字転落になりかねない厳しい経営状況にあった。小倉氏は「商業貨物の輸送市場で負け犬になったヤマト運輸は、今後いくら営業努力を重ねても業績が好転する見込みは薄いのではないか。それならば仕事を変え、新しい市場を目指したほうが良いのではないかー。そんな考えが脳裏に浮かんで離れなくなった」と述べている。このままでは会社は持たない、そのような経営者として胸を締め付けられるような思いで日夜生き延びる道を求めていたことだろう。しかし、新しい市場として小倉氏が考えた個人宅配事業は当時の運送業者にとってあまりにもデメリットが大きかった。ここで私が敬服するのは、小倉氏が「では、どうしたらデメリットを抑えることができるか。それを考えるのが、経営者の役割」と思い定めた覚悟と勇気だ。デメリットを前にして、ひるまずにデメリットを克服していけば「個人宅配事業を制覇することも夢ではない」と小倉氏は考えた。それからの展開はご承知の通りだが、私が小倉氏から学びたいことは「考え続ける」という姿勢だ。正確に言うならば、小倉氏がどのように考えたか、危機を乗り越え、新市場を創出した強靭な思考力、本質に迫り、状況を変えていった思考方法とは一体どのようなものであったのか、を私もまた考えなければならない、ということだ。ピンチの中で右往左往せずに腰を据えて「考える」、その中から本物のモデルが産まれてくるのではないか。考える、考える、考える、考える、そして考える。