ピープルズデザイン・分離から混ざり合いへ

Think the Earth主催のセミナー&サロン 第21回目、「クリエイティブな『超』福祉=ピープル・デザイン」。ゲストスピーカーは須藤シンジさん。

以下主催者側の須藤さんの略歴だが、ご次男が脳性小児麻痺で出生し、以来障碍児の親として現行の福祉の世界の地味さ、世の中に出ていけない壁を乗り越える活動に取り組んでいる。会場は80名定員だったが、ほぼ満席の盛況。このセミナー&サロンに誘ってくださったのは以前北千住ルミネのイベントでご一緒した主催者側のTさんだ。

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ゲスト

須藤シンジ(すどう しんじ)さん

 

有限会社フジヤマストア代表取締役

有限会社ネクスタイド・エヴォリューション代表取締役 http://www.nextide.net/

NPO法人ピープルデザイン研究所代表理事 http://www.peopledesign.or.jp/

 

大学卒業後、大手流通企業に入社。宣伝、バイヤー、店次長などを歴任。次男が

脳性麻痺で出生し、以来障害児の親として現行の福祉の世界のジミさを実感。ボ

ランティア活動等に参加しながら、自身が能動的に起こせる活動の切り口を模索。

2000年に独立し、マーケティングコンサルティング会社フジヤマストアを設立。

商業施設をはじめとする多業種のブランディングディレクション、研修、企画・

運営を手がけている。

 

2002年にソーシャルプロジェクト/ネクスタイド・エヴォリューションを開始。

世界のトップクリエイターとのコラボレーションで、「意識のバリアフリー」を

メッセーする活動を展開中。2010年からは従来型の福祉的なアプローチと一線

を画す「PEOPLE DESIGN(ピープルデザイン)」という新たな概念を立ち上げ、

障害の有無を問わずハイセンスに着こなせるアイテムや、障害者を街に呼び込む

為の各種イベントをプロデュースしている。

 

2012年4月、特定非営利活動法人ピープルデザイン研究所を創設。現在、川崎

市との本格的な取組みも準備中。また近年は、国内外の教育関連機関からも注目

されており、オランダのT U Delft/デルフト工科大学、慶應大学、国立滋賀大学

などで授業を展開している。

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須藤さんの話は楽しかった。親しみのある、冗談も交えた話振りで約75分、話に引き込まれた。

テーマの展開は多岐にわたるので、ここではテーマの中心にある一つのことについて触れたい。

それは「多様性の中の自立」ということだ。障碍者も健常者も混ざり合い、「違いは個性、ハンディは可能性」と認識する。日本の社会は障碍者と健常者の接触頻度が少なく、そのため健常者は障碍者に対し無知という状態になり、そこから場合によっては恐怖も生まれてくる。須藤さんは障碍者も健常者と混ざり合うために、モノ、コト、町づくり、仕事づくり、それぞれのレベルでの混ざり合いの

仕掛けを、デザインなどを活用して作り出している。私自身改めてデザインの力、それを生み出すデザイナーの感性の凄さを感じた。質問の時間に私も一つ、須藤さんのお考えを伺った。質問の内容は「日本では障害を持った子供を外に出すことに躊躇する親が多い。それでも昨年北千住ルミネの屋上菜園で野菜の苗の植え付け体験をした時、障害を抱えたお子さんを車椅子にのせてご両親が連れてこられた。菜園のところでお父さんと私がお手伝いをして、お子さんにナスとミニ

トマトの苗を植えてもらいました。私も人の親としてご両親の気持を考え、胸が熱くなりました。障害を持った親に対してどのような励ましがありますか。」

これに対して須藤さんは「障害を持った子供を危ない目に会わないように守りたいというのも

親の子供に対する愛ですが、敢えて子供に何かをさせて自立の機会を与える、というのも親の

愛ではないでしょうか」と答えてくださった。祈りつつ子供を試練に立ち向かわせる。そのような

経験の中で障害を持った子供が段々と逞しくなっていく。須藤さんのお子さんもそうだ。

多様性の中の自立。混ざり合う中でたまたま健常者である自分が、共感する心を持って、障害者と交流する。この混ざり合いの中では「おもてなし」より「思いやり」が大きな意味を持つ。健常者が自己中心から自立して、思いやりの精神で、「違いは個性、ハンディは可能性」という考え方に立って、混ざり合う社会をつくる。分離ではなく混ざり合う、現在はそのような時代なのだ、と思わされたことだ。