プロデュース力の第一番目 「企画力」について

 

プロデューサーのセンス、能力が一番問われるのが企画力だ。津田氏によれば企画力は、先見性、構想力、クリエイティブ力、知識力で構成される力ということになる。私流に解釈すれば、先見性で時代の流れ(時流)の赴くところを読み、半歩先、一歩先の未来をコンセプト化する。半歩先を現在という岸辺に寄せて砕けようとする波の波頭に例えると一歩先は沖からやってくる大きな波に例えることができるだろう。先見性を身につけるためにはいつも時代の海を、そこからやってくる波を見ていなければならない。私の現在の仕事に多大の示唆を与えてくださったY氏はいつも時流を見ている。最近お付き合いが始まったもう一人のY氏は毎日「波頭」を見つけ、捕まえようとしている。それぞれ大変な仕事だ。ある講演会の後で、有名な研究所のコンセプトプロデューサーの方にどのようにして未来を読むか、と伺ったことがある。答えは「兎に角多様な情報を集めることです」、とのことだった。学際的情報収集ということだろう。多様な人々と付き合う、ということも含んでいるはずだ。及ばずながら、私も時流と波頭を読んで、捕まえる努力をしている。

なぜなら古人曰く、「先の読めないものは滅ぶ」との言葉が気になるからだ。私は学生時代、

弁証法について勉強したことがある。当時は経済学的、哲学的な勉強だったが、弁証法という世界は私の内に現在迄留まっている。あれは2年前のことだったろうか、本屋で田坂

広志氏の「使える弁証法」と言う本を見つけ、購入した。田坂氏は弁証法とは「螺旋的発展」の法則であり、螺旋的の意味は、「進歩・発展」と「復活・復古」が同時に起こる。

田坂氏の弁証法はヘーゲル的で、私が勉強した弁証法は西欧マルクス主義の流れを汲むものであり、主体と客体の弁証法、全体性の弁証法という傾向が強かったが、田坂氏の本を

読み、歴史を理解するためにはやはりヘーゲル弁証法が有効だと感じた。田坂氏の「進歩・発展」と「復活・復古」が同時に起こる、を私は「温故知新」とした。これが現在の私が時流を読むやり方だ。つまり時代は過去の資源をもう一度、吸収し、咀嚼しながら、未来に向かう。私の先見性は波打ち際にある、「温故知新」という櫓の上から時代の波浪を見ることだ。