ヤンキース田中投手の本当の試練

メジャーに移籍し、ヤンキースで文字通り目覚しい活躍をした田中投手が大きな試練に直面している。試練とは肘の手術を受けるかどうかではない。怪我をしたのだから治療を受けるのは当然だ。問題は、田中投手は今迄のようにスプリッターを多投することはもうできない、ということだ。企業で言えば、主力商品を失う、ということになる。圧倒的なシェアを誇り、稼ぎ頭であった商品を失えば、企業としては立ち行かなくなる。米国でかつてスプリット旋風を起こした選手がいたそうだ。80年代のアストロズのマイク・スコット。華々しい活躍の期間は短く、アッという間にマウンドから姿を消した。スプリットは「両刃の剣」という認識が米国の球界では定着している。田中投手はスプリットを投げすぎた。面白いように三振がとれるスプリットに取り付かれていたのかもしれない。今後は世界最高と言われたスプリットを封印して、他の球種で勝負しなければならない。その切り替え、新しい球種の組み立てを考え、契約金に値する実績を残すことができるかどうか、田中投手の本当の戦いはこれから始まる。