不可能を可能にするビジネスモデル

ビジネスモデルが特に求められるのは、デメリットがあるとか、採算に合わないという理由で、切実なニーズがあるにも拘らず放棄されている分野だ。デメリットを解決し、採算に乗る仕組を開発し、持続・発展可能なビジネスモデルをつくるには、勇気と先見性が必要だ。日本型ビジネスモデルの研究の中で、江戸時代、困難な状況の中で、藩の財政改革に取り組んだ、福井藩の由利公正、富山藩の前田正甫の事例を見ると、改めてその感を深くする。由利公正は福井藩に、現代的に表現すれば外国貿易を行う大商社を出現させた。

前田正甫は医薬品の製造を通じ、「他領勝手」の方針の元日本全国に販売網を構築した。二人に共通しているのは民富論的な思想だ。あるいは厚生経済学的な考え方と言っても良いかもしれない。現在株式会社のあり方についての議論がある。米国の基礎をつくったピリグラムファーザーズの米国移民のプロジェクトは株式会社方式で行われた。株式会社は株主への利益還元が最大の特徴だ。社会性、公共性、倫理性はあくまで付随的なものであろう。次の時代を拓くビジネスモデルは株式会社的発想の狭い世界に留まらずに、民富論的、厚生経済学的分野にも広がりを求めていくべきではないだろうか。事業の成功と継続的発展はその時代の「民」の支持によって始めて可能になるのではないか。困難に立ち向かう勇気と先見性はそこから出てくる。