五円玉に寄せて

貨幣の銘には象徴的な意味がある。例えばイエスの貨幣についての問答。新約聖書のルカの福音書20章22節から25節まで引用する。

「ところで、私たちが、カイザルに税金を納めることは、律法にかなっていることでしょうか。かなっていないことでしょうか」

イエスはそのたくらみを見抜いて彼らに言われた。

「デナリ銀貨をわたしに見せなさい。これはだれの肖像ですか。だれの銘ですか。」彼らは「カイザルのです。」と言った。

すると彼らに言われた。「では、カイザルのものはカイザルに返しなさい。そして神のものは神に返しなさい」

 

さて日本の五円玉。この硬貨は1949年(昭和24年)に発行された。五円の字体が少し変っているが、それ以外は発行当初のままだ。この五円玉のデザイン精神に改めて目を向けてみたい。それだけの価値のある硬貨だからだ。

まず稲穂。粒が充実し、大きい。米粒は実るほど垂れる穂で豊作を願っている。粒の数は数えてみると全部で27粒。稲穂は農業の象徴だ。瑞穂の国。

稲穂の下は水。水平線が12本見える。水平線は海、水平線の数が多いのは海に囲まれていることを表しているのだろう。海は水産業の象徴。

真ん中は穴が開いているが、これは歯車を表している。工業・産業の象徴だ。

裏面の双葉は民主主義に向って伸びていく日本を表しているが、同時に林業の発展も表していると思われる。そしてこの五円玉が使われ流通するということは、商業の発展を意味することになる。

硬貨の真ん中に穴が開いているのは視覚障害者にも分かりやすくするというのが目的だったが、同時に材料費の節約もあったとのこと。

五円玉はごえんから「ご縁」ということで縁起の良い硬貨と見られている。人と人とをつなぐ象徴でもある。現代風に言えばラッキー&コミュ二ティ硬貨ということになるだろうか。

 

一次産業と二次産業と三次産業のバランスの取れた発展、それを支える民主主義。障害を持った人々への配慮。節約精神。日本の復興を願った昭和24年の時代の人々の思いがこの五円玉には込められている。発行年から66年。その願いはどれほど実現しただろうか。改めて考えてみなければならないことだ。

たかが五円、されど五円。五円玉の発行数が減っているようだ。この際コレクションも考えてみよう。