人は生き続ける・矢作教授「人は死なない」

人間にとって「死」は最大の問題である。そして人は「死んだ後はどうなるか」を考える。今月の文芸春秋で立花氏がこのテーマについて専門家に行なったインタビューを掲載している。段々死後の世界が明らかにされつつあるような印象を受ける。また東大医学部の矢作教授は「人は死なない」という本を出し、大きな注目を集めている。ここで大切なことは私達が「人間の本質とは何か」について整理しておくことではないかと思う。矢作教授は人間の本質は「魂」であると感じている。肉体は魂が活動するための着ぐるみであり、この2つを「どちらも大事なもの」と考える視点を私達に提示している。肉体が滅びても人間の本質である魂は生き続ける、だから人は死なない、と言う。このようなことを宗教家が言うのではなく、医学部付属病院救急部・集中治療部部長が言うところに一種の衝撃と勇気と説得力を感じる。もし、人は死なないのなら、私達のこの世での生き方は大きく変っていくことだろう。つまり次の次元の「生」のために現在の次元の「生」があるなら「今ここでより良く生きる」ということが何よりも大事になるのではないか。人生を長く生きることも大事だが、もっと大切なことは人生をどう生きるか、人生の質が問題ということになる。そして「質」とは何か、が。

今週の「週刊現代」の<スペシャル>で「逆縁の哀しみ」が取りあげられている。子供に先立たれる辛さ、悲しさは特に痛切だ。人にはそれぞれこの世に生まれてきた役目があり、若くして死んでもその役目を全うし、人生を完成させてあの世に召されたのだ、と頭で思いこもうとしてもなかなかできるものではない。

なぜ宇宙と私達の生を統べている「摂理」は生き物に、さらには人間に死の哀しみ、辛さを与えたのだろうか。矢作教授の本を読みながら、考えさせられていることである。