人工知能とロボット

私の友人が人工知能の会社で研究開発をしていた。10年前になるだろうか、たまたま縁があって、その会社と販路開拓のお手伝いということで関りを持った。その会社では会話型の人工知能の開発に力を注いでいた。技術的なことはよく分からないが、私が注目していたのは、「その人工知能がどこまで人間に近いレベルで会話ができるか」ということだった。定型的なQ&A的会話であれば、人間と会話をしても対応できるだろうが、会話はコンテクストもあり、飛躍もある。例えばコールセンターに導入してオペレターの代わりを務めることができるだろうか。またクレームセンターでクレームの対応ができるだろうか。

会話の中で私達は問題解決のためにアイデアを出し合ったりするが、会話型の人工知能はそれについてくることができるだろうか。臨機応変に会話を続けることができるか。また人工知能の発言内容に対して責任は誰が持つかという問題も出てくる。言うまでもなく、使える領域は限定的だ。私が期待したのは2つだった。一つは農業分野の経験知の人工知能化であり、会議の議事録の文書化だった。農業関係は大学の研究室に持ち込んだが、エキスパートシステムとの違いを出せなかったため、それ以上検討は進まなかった。会議の議事録は1:1の会話ではなく、会議の性格上複数の発言者がいるので、研究チームに言わせると難しいとのことだった。それから紆余曲折あったが、私はその会社のお手伝いから手を引くことになった。

さて今年の1月7日の日本経済新聞の「働きかた Next」で「ロボット失業」怖くない、という記事を読みながら、人工知能の時代がいよいよやってきたとの感を持った。その中で注目したのはみずほ銀行が人間の言葉が分る日本IBM製の認知型コンピューターをコールセンターの仕事に使う計画というところだった。

今後人工知能が引き受けることの出来る分野は拡大していくことだろう。ロボットに人工知能が搭載されるケースも増えていくはずだ。京都大学の松野教授は災害で傷ついた被災者の精神面のケアを補うものとして、動物を模したロボットの開発を進めている。ロボットに「ぼく達は人の仕事のトモダチだよ」と言ってもらうためには、人は「社会性、創造力、臨機応変さ。この3つにヒントがある」英オックスフォード大学のマイケル・オズボーン准教授の指摘だ。