人間にとって不自然な状態と自然な状態

テレビでニュースを見てびっくりした。それは東京メトロの東西線の車掌が覚せい剤使用で逮捕されたことだった。名前は東京メトロの方針で伏せられていたが、今後全乗務員を対象に調査をするとのこと。交通機関には特に交通安全、人命尊重の勤務態度が求められる。私も東西線を利用することが多いのでニュースを聞いて正直ヒヤリとした。電車の事故は一歩間違えると大惨事になりかねない。そんなことが頭の片隅に残っていた時、副都心線に乗り、たまたま車窓を見ていた。見えるのは暗い壁ばかりだ。地下鉄は言ってみればトンネルの中を走り続けている。外に見える普通の風景はない。ただただ暗闇の中を走っている。私達乗客は目的地についたら地上に出る。しかし、乗務員は暗いトンネルの中を走り続けている。路面電車の場合の踏み切り事故は地下鉄の場合はないが、単調に暗いトンネルの中を走り続けるというのは何か人間にとって不自然ではないかとふと思った。潜水艦の乗務員はタフな神経の持ち主でないと勤まらないと聞いたことがある。一旦潜航を開始したら、密室空間の中で24時間過ごさなければならないからだ。地下鉄の乗務員の場合はそこまでの拘禁感はないかもしれないが、規則を強化して事故の再発を防止するよりも、勤務時間中に一定時間自然の中に身を置き、気分転換をしたらどうだろうか。規則、検査で縛るだけが解決策ではないはずだ。自然な状態に、人間的風景に向って「浮上」の機会を今迄以上に持つことが大事ではないか。誰かの便利さの背後で誰かが不自然に耐えている。私達はその想像力を失ってはならないのではないか。