会社の後始末をする人々「しんがり」

「しんがり」という本が売れているらしい。新聞の広告によれば「1997年の山一證券破綻時、最後まで後始末のために尽力したのは「場末」と呼ばれた部署の社員たちだった。筋を貫いた彼らの人生を描く」。私が昔経営していた会社は山一證券のビルのすぐ近くにあった。地下鉄東西線の茅場町駅の改札を通り、地上に出て隅田川に向って永代通りを歩くと左側に山一證券の高層ビル、道路を渡ったところに私の会社があった。永代通りを途中迄山一証券の社員の群れの中を歩いていた。破綻する前、山一證券に勤めている社員で小児麻痺のためだろうか、足に後遺症があって松葉杖を使っている社員と一緒になった。雨が降っているので傘がさせない。そこで傘を差しかけて一緒に歩いた。話しているうちに彼が言った言葉が耳に残っている。「ウチの会社はもう駄目ですよ」

最後まで後始末をしたのは12人だったとのことだ。もう18年前のことになるが、山一證券の破綻時のことは昨日のように覚えている。この本を是非読みたいと思って本屋に立ち寄っているが、売っていない。そのうちどこかで見つかるだろう。

山一證券が破綻した後、数年経って、私は会社を自主廃業した。50名近くいた社員を退職金を払いながら段々減らしていき、最後は4人となった。最後に本社ビルを売却して最後迄一緒に残務処理をしてくれた3人の社員とも別れ、最後は自宅で、一人で残務処理をした。撤退戦を支えるのは確かに「誇り」かもしれない。私の場合は「誰にも金銭的迷惑をかけない」という決意が支えだった。「なにがなんでも自主廃業をやり遂げる」。意地だったのかもしれない。無事自主廃業をやり遂げた後はかなり長い間虚脱状態に陥ったことを覚えている。