倒産者のための菜園コロニー
随分前のことだが、ビジネスパースン向け菜園コロニーを構想したことがある。10年以上前になるだろうか。当時私は企業倒産者を救う「八起会」の会員だった。私の場合は倒産ではなかったが、気持の上では倒産と同じだったかもしれない。八起会の毎月の例会に参加して、会長の野口誠一氏の講話、また会員の体験談を聞き、自分を見つめ直す貴重な機会を得た。八起会には弁護士、公認会計士の専門家もいて、先生方の話も大変参考になった。例会の最初に皆で歌を歌う。「幸せさがし」。3番まであるが、この歌はどん底を味わったものが、すべてを失ったものが初めて知る人生の真実を歌っている。中小企業の倒産者の現実は悲惨だ。殆どの人が一度は自殺を考える。経営者の家族も大変な生活を強いられる。例を挙げればキリがないが、体験談を聞くうちに、私は将来企業倒産者が逃げ込み、自分を立て直すことができるような場所、菜園コロニーのようなものがあれば、と思うようになった。倒産前後、経営者は普通の精神状態ではなくなっている。倒産した後は錯乱状態にもなる。倒産後、関西から逃げてきた経営者夫婦は公園のトイレで顔を洗い、用を済ませて、まさに着の身着のままで八起会の事務所を訪ずれたという。その後、小さなアパートを紹介され、隠れるようにして生活したそうだ。倒産となると債権者が追いかけてきたり、またマチ金から借りていたりすればその筋からの取立てもあることだろう。法的なことは専門家の助けを受けてメドはつけなければならないが、一旦それが終ったら、次には心身の立て直しが必要だ。八起会の歌にもあるように「生きねばならぬ 心ふたたび 七転び八起き 七転び八起き」。菜園コロニーでは自給自足だ。畑に出て一緒に働き、健康的な食物を食べる。夜は自助グループで話合ったりして、自分を見つめなおす。倒産者だけでなく心の問題も含めて都会生活で傷ついた人も受け入れるコロニーだ。あるいは農園カフェ。私の農業関係の仕事の先にはいつもこの菜園コロニーのイメージがある。いつか実現したい。私の人生の集大成の一つとして。