利益マインドについて

 

昨日のブログで利益への道は顧客を十分に理解することから始まる、というスライウォツキーの言葉を紹介した。私が数年前スライウォツキーの「ザ・プロフィット」を読んで一番感銘を受けたのは一番最初に紹介されている利益モデル「顧客を知ることが利益のはじまりー顧客ソリューション利益モデル」だった。登場人物のチャオは23通りの利益モデルを説明するにあたって、この顧客ソリューション利益モデルを最初にもってきた。チャオは言う。「利益が生まれる道筋に一つとして他と同じものはなかった。分析するうえで重要なのは、企業の固有性を形作るさまざまなディティールを理解することだ」そしてこの顧客ソリューション利益モデルを見事に実現したファクトセット社の事例を取り上げる。

詳しくは「ザ・プロフィット」を読んで頂きたいが、チャオは顧客を徹底的に理解することがどれほど重要なことか説明する。結論は理解し、その上でカスタマイズした製品、サービスを提供するということだ。ファクトセット社の利益曲線は理解するということの本質を示していて、美しい。私は座右の書としてこの「ザ・プロフィット」を折りに触れて繰り返し読んでいる。そして昨年出版された「ビジネスモデルジェネレーション」(BMG)では顧客の理解について「顧客インサイト」の中で詳しく触れている。インサイトという言葉が重要だ。インサイトは通常「洞察」を訳される。理解の深いレベルと考えて良いだろう。さらにBGMではインサイトを的確に行なうためにXPLANE社が開発した「共感マップ」が紹介されている。この共感マップは理解するとは、洞察するとはどういうことか教えてくれる。元一橋大学学長の阿部勤也氏はヨーロッパ中世の研究をするにあたり「何を理解したら、本当に理解したことになるのか」という問いを立てて、研究に取り組んだとのことだ。私たちもこのような問いを立てることが必要だ。「顧客の何を理解したら本当に理解したことになるのか」。顧客毎に理解の項目、理解の内容が違ってくるのではないか。顧客視点に立ちながら設定した項目、内容が的を得ているかどうかの検証も重要だ。

顧客が、「そこまで深く当社の課題について分かってくれているのか、また当社が気がついていなかったところ、可能性まで示唆を与えてくれ、その上で短期的、中期的、さらには長期的なソリューションまで考えてくれている」と思うことができれば、顧客との信頼関係が築けるのではないか。理解力、洞察力、共感力はビジネスモデルをデザインする上で最重要項目の一つだが、マニュアル的に習得できるものではないかもしれない。YOUの視点で物事を考えることは自己中心を基本的性格として持っている私たちには確かに難しいことである。持たされた長い箸のためテーブルの御馳走を口に持ってこれず、食べられなくて餓え死にしそうでもがいていたら、相手は長い箸で料理をとって食べさせてくれた、という喩話がある。相手のことを考える。それが自分に返ってくる。洞察し、共感する。そして自分にできることを提案し、提供する。何を洞察するか、日々の、これも修行かもしれない。